【書評】『富の階段』 資産ステージで変わる「正解」の戦略

「投資信託を月3万円積み立てていますが、これで富裕層になれますか?」
資産形成の相談を受けていると、このような質問をいただくことがあります。
でもその答えは、あなたの現在の「資産ステージ」、それと「目標」によって変わってきます。
今回紹介する『富の階段』は、資産規模によって取るべき戦略が全く異なるという、当たり前でありながら非常に重要な事実を教えてくれる一冊です。
1. 富裕層の真似をしても、富裕層にはなれない
よく「富裕層の資産運用法」という言葉を耳にします。
しかし、すでに富を築いた人が行っている運用法を、まだ資産が十分でない個人がそのまま真似したからといって、富裕層になれるわけではありません。
はっきり申し上げれば、一般の個人が富裕層と同じ手法を取り入れても、そこへ到達することは不可能です。本書を読むと、その理由が明確に分かります。
富を築く各段階において「今、何をすべきか」をこれほど明快に示した本は、他にはなかなか見当たりません。資産形成を目指すなら、まずは自分が今どの段階(レベル)にいるのかを正しく知る必要があります。
2. あなたは今、どのレベル?「富の階段」6つのステージ
本書では、自宅などの「動かせない資産」を除いた純資産額に基づき、ステージを6段階に分けています。
本書では、米国基準のドルで書かれていますが、現在の日本の為替、特に物価に照らし合わせて考えると、おおよそ以下のような目安になるのかなと思います。
- レベル1:100万円未満
- レベル2:100万円以上 ~ 1,000万円未満
- レベル3:1,000万円以上 ~ 1億円未満
- レベル4:1億円以上 ~ 10億円未満
- レベル5:10億円以上 ~ 100億円未満
- レベル6:100億円以上
これを見てわかるのは、資産100万円未満のレベル1の戦略と資産100億円以上のレベル6の資産形成戦略が、同じということはありえないという事です。
言われてみればこれは当然のことだと思いますが、意外と多くの人が見落としている「盲点」のようにも感じます。
3. レベルに合わせて、お金の使い方から投資戦略まで変えていく
本書の核心は、「各レベルに応じて、普段のお金の使い方から貯蓄、投資、事業戦略までを、段階を踏むように変えていくこと」にあります。
レベル1の人が、いきなりレベル3や4の人と同じことをしようとするのではなく、そのステージごとにやるべきことを着実に実行する。それが次のレベルに到達するための、最良の道だということです。
中には段階を飛び越えて、上位レベルの手法を試したいと思う人も多いでしょう。しかし、それはなかなかうまくいかないことの方が多く、もし失敗した時にはダメージが大きくなりすぎることもあり、かえって目標から遠ざかってしまうこともあるものです。
4. 投資の前に「貯蓄というスキル」を磨く
レベルごとに資産形成の最良の方法が違うということを示す例として。
レベル1や2の方の戦略では、資産運用や投資に精を出すよりも、「収入を上げること」と「貯蓄をすること」に注力する方が、資産形成の効果ははるかに大きいことが挙げられます。
本書によれば、投資を本格的に重視すべきなのはレベル3になってからです。それまでは、仕事を頑張り、家計管理を徹底して、スキルアップにより収入を増やすことに労力を費やす方が有効だと説いています。
これは、私自身が数多くの資産形成相談を行ってきた経験からも、全くその通りだと感じます。
「貯蓄ができていないけれど、投資をすればお金が増える」と考えるのは大きな間違いです。投資で成功する人の多くは、すでに「貯蓄」という第一段階のスキルを身につけています。普段から貯蓄ができている土台の上に、資産運用でさらに加速させるのが、レベル3の資産形成戦略です。
レベル1や2の方は、投資の手法を追う前に、まずは家計管理やお金の使い方から見直す方が、レベル3にレベルアップするのが早くなります。
5. 「足るを知ること」が幸せへの一番のコツ
富のレベルを知り、自分が今どこにいて、どこになりたいかを考えたとき、「レベル6まで行きたい」と心から思う人はどれくらいいるでしょうか。
ここに、富の階段を上る本質があります。
それは、「富裕層だからといって、必ずしも幸せとは限らない」という事実です。
お金にあまり苦労しなくなるレベル3まで行ければ十分、と考える人も少なくないはずです。
大切なのは「足るを知ること」。
自分にとってどのレベルが幸せと言えるのか。その目標を定め、今やるべきことに集中する。本書は、そのための確かな指針を与えてくれます。
「お金が増えれば幸せになれる」わけではありませんが、かといって「お金で幸せは買えない」というのも間違いだと著者は言っていました。
