お金があっても幸せになれない?原田ひ香『月収』が教えてくれる「本当の資産形成」の目的

『月収』 原田ひ香
テレビドラマ化もされ、大きな反響を呼んだ原田ひ香さんの小説『三千円の使いかた』。その原田さんが新たに「お金」をテーマに描いたのが、今回ご紹介する『月収』です。
前作に引き続き、原田さんの描くお金の世界は非常にリアルで興味深いものです。物語は「月収4万円」の人から「月収300万円」の人まで、さまざまな収入層の登場人物たちが描かれています。
参考:書評記事 『三千円の使いかた』が教えてくれる、人生を豊かにするお金の哲学|プロが選ぶマネー本
お金は「選択肢」を増やすが、幸せには直結しない
この本を読んで強く感じたのは、「お金があるからといって、無条件に良い人生になるわけではない」という事実です。
普通に考えれば、月収4万円の人よりも月収300万円の人の方が、悩みもなく幸せな人生を送っていると思うかもしれません。
しかし本書では、どちらの層も似たような「人生の不安や悩み」を抱えている姿が描かれています。これは、本の中だけの話ではなく、現実の社会でもまったく同じです。
お金は人生の選択肢を増やすツールです。しかし、最終的に幸せになれるかどうかは「その選択肢の中から、自分が何をやるのか(どう生きるのか)」にかかっています。
手段が目的化する現代のリアル
作中に出てくる「月10万円投資の29歳」のエピソードは、今の時代を象徴しています。
彼女は不明瞭な将来への不安から、新NISAの限度額を埋めるために日々節約に励み、投資を行い、3,000万円を優に超える資産を築きました。
しかし、経済的な不安が消えても、それで彼女が幸せを手にすることができたかと言うと、そうでもなかった。
毎月取り崩しても大丈夫だと頭ではわかっていても、今までと同じような節約を続けてしまう。
お金を貯めることに必死で、「何のために使うのか」「何がしたいのか」を考えていなかった。
実際の投資相談の現場でも、これと全く同じ状況の方に多くお会いします。将来の不安からお金を貯めること自体が目的化してしまい、いざ資産ができても『使い方』がわからないんですね。
一方で、最後に出てくる「月収17万円の22歳」の女性の物語は対照的です。
施設育ちで決して恵まれた環境ではなく、就職先の給料も決して高くはありませんでした。
しかし、給料に補填できる収入を得るために小さな副業を始め、その副業が次第に事業という形になり、仕事の依頼を受け、従業員や社会に還元していくようになります。
その中で、「自分が世界に影響を与えられるような人になれるかもしれない」というワクワク感を見出していきます。
彼女は、どうやってお金を手に入れ、どう使っていくのか、つまり「自分がどう生きたいのか」を見つけることができたのかもしれません。
お金があれば「選択肢が増える」、年収300万円の人のようになれば、「世の中への影響力も強くなっていく」、そのことを自覚することも大切なのだと思います。
人生の目的のようなものを持つことは、「私たちの感じる幸せ」と大きくつながっているんじゃないかと思います。
「使い方」を考えることは「生き方」を考えること
お金は持っているだけでも、ただ入ってくるだけでも意味がありません。「ましてやお金が増えれば幸せになれる」という考え方もどうやら違うようです。
ですが、「お金で幸せは買えない」と切り捨てるのも間違っています。
お金があることで、できること、選択肢が増えることは間違いありません。
ボランティア活動に参加する、事業を始める、世界中に旅行に行く、お金があることでできることがたくさん増えていきます。
その中で、自分のやりたいこと、できれば社会に貢献できることが、自分の目的や目標として見つかった時、そのお金が活きるということなんだと、この本は教えてくれます。
大切なのは、お金とどう付き合い、どう使っていくか。極端な言い方をすれば、「使い方(生き方)こそが幸せにとっては大切」なのかもしれません。
お金は人生にとっては、従であって主ではない。
これから投資を始めようとしている方、あるいは日々の資産形成に行き詰まりを感じている方は、ぜひ一度『月収』を手にとってみてください。
あなたの「お金との付き合い方」を、根本から見直すきっかけになるかもしれません。
「何から手を付ければいいかわからない」「今のやり方で大丈夫だろうか」。そんな小さな疑問を放置せず、一度プロの視点にぶつけてみてください。
CFP®、そして投資家として実践の中で培った知見を活かし、あなたの状況を客観的に分析します。特定のプランを押し付けるのではなく、あなたが納得し、自信を持って進むための「後押し」をさせていただきます。
