投資家ケインズの物語

はじめに:教科書には載っていない「投資家ケインズ」

ジョン・メイナード・ケインズ。 「マクロ経済学の父」として、その名を知らない人はいないでしょう。

しかし、彼が「超一流の実践投資家」でもあったことを知る人は、意外と少ないのではないでしょうか。

理論家(学者)が実務(投資)の世界で成功する例は極めて稀です。多くの学者が机上の空論で市場に挑み、敗れ去ってきました。

しかしケインズは違いました。

彼は経済学者としての世界的名声を保ちながら、投資家としても驚異的なパフォーマンスを残した「二刀流」の偉人だったのです。

今回ご紹介する書籍『20世紀最高の経済学者 ケインズ 投資の教訓』(ジョン・F・ワシック 著)は、そんな知られざる闘いの記録です。

挫折からの転換:「予測」は不可能である

投資家としてのケインズは、最初から順風満帆だったわけではありません。

本書によると、投資を始めた初期のケインズは、自身の知能と経済理論を過信していました。

「データを駆使して需給を予測すれば、市場を出し抜ける」と考え、コモディティ(商品)の短期売買や通貨投機を行っていました。

しかし、結果は失敗。 そこで彼は、ある重要な事実に気づきます。

「過去のデータで未来を予測することは不可能である」

市場を動かしているのは、合理的な数式ではなく、人間の衝動や心理――彼が名付けた『アニマルスピリット(血気)』だったのです。

この「不確実性」を受け入れたとき、彼の投資スタイルは劇的な進化を遂げました。

バフェットよりも過酷な「冬の時代」を生き抜く

ケインズが投資家として活動したのは、2度の世界大戦と世界大恐慌の真っただ中でした。

1929年の大暴落でNYダウは最大90%近く下落し、株価が元の水準に戻るまでに約25年もかかったと言われています。

現代の「投資の神様」ウォーレン・バフェットでさえ、ここまでの長期低迷相場は経験していません。ケインズは、投資家にとって最悪の「不運の時代」に結果を出さなければならなかったのです。

その真髄は、「下落相場での圧倒的な守備力」にありました。

  • 1931年(大恐慌): 米国株が約43%暴落する中、ケインズのポートフォリオは約25%の損失で踏み止まりました。
  • 1937年(下落局面): 米国株が約35%下落した際、なんと彼は約8.5%のプラス利益を出しています。

市場がパニックに陥る中、傷を浅くし、あわよくば利益を出す。 これこそが、ケインズ流の「負けない投資戦略」だったのです。

結論:次の「大暴落」に備える知恵

現代は、効率的市場仮説やAIによる運用が全盛です。しかし、人間の本能(アニマルスピリット)が変わらない限り、市場の暴落や長期低迷は必ずまたやってきます。

「今後10年、株価が低迷し続けたらどうするか?」 今の好調な相場しか知らない私たちにとって、この問いは重く響きます。

大恐慌や戦争という究極の不確実性を乗り越えたケインズの投資哲学は、まさに今こそ学ぶべき「生存のための教養」と言えるでしょう。


💡 どんな時代でも揺るがない「強固な資産」を

「もし明日、大暴落が起きたら、自分の資産はどうなるんだろう?」 「歴史的な暴落に耐えられるポートフォリオを作りたい」

ケインズが生きた時代のように、未来は誰にも予測できません。だからこそ、予測に頼らない「準備」が必要です。

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