『現代バリュー投資: インデックス投資、アルゴ、アルファを超えて』 ゲイリー・スミス/マーガレット・スミス(著)

今の「当たり前」に立ち止まる。インデックス投資が最強ではない理由

現在、多くの個人投資家にとっての「最適解」とされているインデックス投資

低コストで市場平均のリターンが得られるこの手法は、過去の実績から「アクティブファンドの8〜9割がインデックスに負ける」という事実が広く知られ、主流となりました。

しかし、本当にインデックス投資は万能なのでしょうか?

本書『現代バリュー投資』(ゲイリー・スミス/マーガレット・スミス 著)は、この現代の投資の常識に鋭くメスを入れます。

偉大な投資家ウォーレン・バフェットの師、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の原点に立ち返りつつ、現代の効率的な市場環境に対応した新しい投資アプローチ「現代バリュー投資」を提案する一冊です。

この記事では、本書を通じて、私たちが今一度考えるべき「株式の本質的な価値とは何か?」というテーマについて解説します。

1. バリュー投資の起源:ギャンブルだった市場を変えたグレアムの偉業

かつて株式市場は、短期的な値動きに依存する「大馬鹿理論(ある馬鹿者が高値で買った資産を、さらに高く買う大馬鹿者に売ることで儲けを得る)」が支配する、ほとんどギャンブルのような世界でした。

その結果、激しいバブルとその崩壊が繰り返され、そして世界大恐慌で株式市場は崩壊します。

この混乱の中で、ベンジャミン・グレアムなどの一部の投資家は、価格変動から切り離された「株式の本質的価値」に着目しました。

これが、バリュー投資という、まさに「投資の本質」を問うアプローチの始まりです。

株式とは何か? 利益の源泉は何か?——彼らは、この問いを軸に投資の在り方を確立しました。

2. なぜ、現代の主流はバリュー投資から離れてしまったのか?

グレアムの教えから時が経ち、世間の目は次第に「現代ポートフォリオ理論」に代表される金融工学へと移ります。

「効率的市場仮説」という考え方が主流となると、「株式の価値はすでに株価に十分に反映されている」と見なされ、個別銘柄の分析よりも市場全体に広く分散投資するインデックスファンドが注目を集めました。

さらに、市場の中から特定のファクター(例:高配当、小型株など)を抽出するファクター投資(スマートベータ)が考案され、より洗練されたインデックス運用へと進化していきました。

この流れは、アクティブファンドの多くがインデックスに敗北するという現実的なデータにも裏打ちされ、「低コストで広く分散されている」インデックス投資が最強であるという現代の常識を作り上げました。

3. インデックス投資が抱える「現代の矛盾」

しかし、本書は、このインデックス投資の普及が引き起こしている現代の矛盾を指摘しています。

  • 金融理論の限界: 金融市場を正規分布で分析しようとするアプローチ自体が、不確実性の高い株式投資の世界においては誤りである。
  • データの誤用: 過去のデータ(ヒストリカルデータ)を大量に使うことで、かえって市場を誤った感覚で捉えてしまっている。

そして、最も重要なのは、インデックス運用に資金が集まる結果、投資家の注目が再び「短期的な値動き」へと向かい、本来の「株式の本質的価値」から遠ざかる、大恐迦以前の「大馬鹿理論」的な感覚に寄ってしまっているという警鐘です。

4. グレアムの思想を現代へ:「現代バリュー投資」の視点

本書が提案するのは、グレアムの教えを現代の市場に合わせてアップデートした「現代バリュー投資」です。

現代は情報が瞬時に広がり、誰でも簡単に手に入るため、「極端に安い割安株」を見つけるのは困難になりました。市場はより効率的になり、「安いのには安いなりの理由がある」と考える方が賢明な時代です。

だからこそ、本書は「株式の本質的価値に注目する姿勢に戻るべき」と強く主張します。

現代バリュー投資のポイント

  1. インカムゲインへの回帰: 投資の本質的な価値を、短期の値上がり益ではなくインカムゲイン(企業から得られる収益)に求めます。
  2. 配当と自社株買いを考慮: グレアムの提唱者の一人であったジョン・バー・ウィリアムズの「価値は配当にある」という考え方を引き継ぎつつ、現代の株主還元策である「自社株買い」も包括的に考慮して企業価値を評価します。
  3. 不確実性の分析: 短期的な株価変動ではなく、「将来のインカムゲイン予測の不確実性」をデータとして分析し、投資判断に用います。

まとめ:短期の波に乗るか、本質的な価値を選ぶか

『現代バリュー投資』は、インデックス投資という「効率的で楽な道」に満足せず、「投資とは何か?」という根源的な問いを突きつけてきます。

  • 短期的な値動きに一喜一憂する投資から卒業したい
  • インデックス投資以外の、本質に基づいた投資法を学びたい

という方にとって、本書は、「低コスト・広分散」という利点を超えた、投資家としての確固たる軸を持つための重要な羅針盤となるはずです。


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