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『Adaptive Markets 適応的市場仮説 危機の時代の金融常識』(アンドリュー・W・ロー)

経済や科学、その他の本

投資家なら押さえておきたい新たな仮説⁉

これまで、金融市場には、効率的市場仮説という強力な仮説ありました。

非常に効率的な市場、たとえば株式市場は、公表されたすべての情報が、情報が公開されたと同時に、価格に反映されているため、株式市場に有利な取引はないという考え方です。

この考え方に、確実に間違っているといえるほどの根拠がなく、また多くの投資家も、効率的市場仮説は、あながち間違っていないと認めていました。

今の金融市場の多くが、この効率的市場を前提として取引されているといっても過言ではないのかもしれません。

インデックスファンドが流行っていることも、この効率的市場仮説という考え方の影響が大きいでしょう。

しかし、実際に株式を取引している投資家の間では、この効率的市場仮説に、違和感がなかったわけではありませんでした。

著名投資家の中にも、効率的市場仮説は、”あながち”間違ってはいないといった表現を用い、効率的市場仮説に、少し穴があると感じているような発言をする人も少なくありませんでした。

かくいう私も、やはり「効率的市場仮説は、”ほぼ”合っているのかな」といった感じで、完全に効率的市場仮説を信用していたわけではありませんでした。

そんな、効率的市場仮説の疑問に答えてくれたのが、この『適応的市場仮説』というわけです。

市場を学ぶには、おすすめの本です。

この本は、値段もさることながら、その厚さもかなりあって、読んでみようと思っても、そうそう手が出しにくい本なのかもしれません。

しかし、市場を理解する上で、この『適応的市場仮説』という考え方は、自分のイメージしている市場にとてもマッチしました。

例えば、市場が常に適正な価格を提示している効率的なものなのであれば、なぜバブルが起こり、その崩壊が、市場に見られるのかといった疑問が湧いてきます。

そういった疑問に対して、効率的というのは、常に正しいという意味ではなく、情報を効率的に取り入れているという事だと説明されたりすることがあります。

それでも、あるべき価格から実際の取引価格が乖離しているのであれば、仮に効率的であっても、そこに意味はないのでは?と思ったりもするものです。

適応的市場仮説は、その疑問に見事にこたえてくれる理論だと思いました。

そもそも、人のつくる経済は、合理的なものではないという事を見事に論じてくれました。

心理学、神経科学、進化論、そういったものからも市場を分析することで、人のつくる経済に何が起きているのかが見えてくる。

とても興味深く読ませていただきました。

適応的市場仮説への感想

実際に株式市場で、株式を取引する中で感じていたこととして。

まず、金融市場で投資をするならば、効率的市場仮説の考え方を無視するわけにはいかないと考えています。

ただ、効率的市場仮説はすべてではないとも考えていて、効率的市場には何か抜け落ちた視点があるのではと思っていました。

そして、それが行動経済学ともよばれるもので、人の経済的な捉え方が、効率的市場仮説で説明するほど、合理的なものではないので、金融市場にもその合理的ではないところが含まれているのではないかといったものでした。

ただ、そこに根拠はありませんでした。

また、金融市場を分析するうえで、よく使われている正規分布という考え方、これもどうやら違うようだという事がわかってきました。

でも、だからどうなのか?と聞かれたらやはり答えられません。

そんな効率的市場仮説に対して持ってきた疑問が、この適応的市場仮説によって、まとめてするっと説明できるようになる。

今の理論の中で、金融市場を理解するには、もっとも実際の金融市場のイメージに近いのではないかと思えてきます。

適応的市場仮説は、まだ登場して新しい理論だということなので、今後この適応的市場仮説をもとに、様々な理論が出てくるようになるのかもしれません。

個人的には、この適応的市場仮説の今後に期待したいと思うところもあります。

すべては、『環境』なのかもしれません。

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