投資信託ではなく、個別株へ投資をする目的は?
「資産運用は、インデックスファンドですべてOK!」という話をよく聞きます。
株式投資をするならば、全世界の株式に投資するオルカン(オールカントリー)、米国の株価指数NYダウやS&P500に連動する投資信託、国内なら日経平均株価やTOPIXに連動する投資信託を利用すればいいという話です。
時間と労力をかけて、個別株に投資をしたところで、結局インデックスファンドに負けることになるのがおちだともよく言われます。
確かに、そういわれてしまえば、それを認めざるを得ないところも多々ありますが。でもたとえそうだとしても、個別株への投資が全く意味のないものなのかと言えば、それは違うと思っています。
株式市場というところは、ある意味、良いものと悪いものを選別する、選挙のようなところだと思っています。
株式市場に上場している会社には、みんなに必要とされる魅力的な事業を行っている会社もあれば、新しい革新的なサービスを行っている会社もある、逆に経営がうまくいっていない会社や事業内容が悪い会社というのもある。
そういう会社たちを取捨選択し、経済の新陳代謝をよくすることは、株式市場の役割の一つだと思っています。だから、みんなの意見が反映される必要がある。
つまり、一人一人が、自分が良いと思う会社も株式を買うことで、みんなから認められたいい会社の株価は盛り上がり、逆に悪い会社の株価は衰えていく。そして、株式市場は世の中の変化をくみ取り、民主的で効率的な経済を実現させることにつながっていくのではないかと思うです。
しかし、インデックスファンドや特定の投資信託ばかりが選ばれるようになってしまうと、市場の取捨選択機能が固定化してしまう。投資信託を運営する一部の金融機関たちの意見だけが株式市場に反映されるようになって、一般の民主的な意見が株式市場に反映されなくなってしまう。
本当にそれでいいのだろうか?
「インデックスファンドで十分儲かるんだから、個別株なんかやめて、インデックスファンドだけ買えばいい。」それって、「自分が儲かるのなら、世界がどう変わろうと知ったことじゃない」って言葉にも聞こえてこなくもない気がします。
投資信託にはない個別株投資の魅力
投資信託にはない個別株の魅力とは、投資した企業とのつながりが生まれることだと思います。
株式投資をする上で、保有している一部の銘柄に入れ込んでしまうことは、あまり良いことではなく、むしろ避けるべきことだとは思っていますが、それでも、投資したことによってその企業のことが気になるようになると実感しています。
どんな商品やサービスを提供してるのかとか、新商品の開発や研究はどんなことをしているのかとか、気持ちの中で、その企業とのつながりが生まれるのを感じます。
そしていつしか、今まで見ようとも思わなかった経済ニュースやテレビなどを見るようになって、また今まで気にもしてなかった経済や企業活動という新しい世界が広がっていくようになります。
これは、ただ投資信託を買うだけでは、ほとんど感じられないもので、個別株という身近な存在を通して世の中を見るようになることで感じられるものなんじゃないかと思うのです。
個別株投資の魅力というのは、その運用パフォーマンス以上に、そういった世界観の広がりの方が大きいのではないかと思っています。
もちろん、個別株投資の運用パフォーマンスだって、上手に投資する事ができれば、十分納得できるものにもなると思っているし、むしろ、その上手にをきちんと学べば、おそらくインデックスファンドを上回ることだって、そんなに難しいことではないと思っています。
投資信託か個別株か、おすすめはどっち?
個人的にお薦めなのは、投資信託よりも個別株投資です。
まず投資信託での投資は、分散投資の数が多すぎるというデメリットが目立ちます。分散投資をすることでリスクを抑えるとよく言われますが、分散投資のリスクを抑える効果は、投資信託のように何千、何百といった数の分散は必要ありません。
運用の実践の中では、過剰な分散よりも、適度な分散であることの方が大切だと考えています。
それと、投資信託には信託報酬手数料というコストがかかりますが、自分で運用する個別株投資ならばそのコストがかかりません。
大手ネット証券の中には、売買手数料や保有時の手数料が一切かからない個別株投資運用のコストがほぼゼロという証券会社もあり、さらには、証券会社の貸株サービスを利用することで、リターンのアップを狙えることさえあります。
また、株主優待という存在も個別株投資の魅力の一つです。
株主優待は、株を保有している会社が行っているサービスに利用できたり、商品を貰ったりすることができる制度で、贈り物という文化のある日本ならではのものだと言われています。
配当金などで現金でもらう方が合理的という意見もありますが、実際いざ物が届いたりすると、やはりうれしいと感じるもので、株主優待は個別株投資の魅力の一つだと感じています。
ただ、当然のことながら個別株投資には、デメリットもあります。
①分散投資にならない程度の少数銘柄で運用しようとするのはリスクが高い事。
②知識不足による銘柄選別の失敗、特に一過性のブームに踊らされる事。
③適度なタイミングでポートフォリオを管理する手間がかかる事。
などが挙げられます。
実は、これらのデメリットは、投資信託に投資をする場合には、ほとんど考えなくてもいいものでもあります。もしこれらのデメリットを避けたいならば、個別株ではなく、投資信託を選んだ方がいいという事になります。
まとめると、投資信託か個別株かという選択なら、個別株投資がおすすめ。
ただし、個別株投資を始めるなら
①適度な分散投資ができるだけのまとまった資金がある人であること
②株式投資をきちんと学ぼうという意識のある人
③年に数回程度、時間を取ってポートフォリオの見直しと管理を行うことができる人
である方がいいと思います。もしそうでないなら、個別株投資よりも投資信託で運用した方がいいのかもしれません。
また、もし可能ならば、投資信託で積み立てをしながらまとまった資金を作り、その間に個別株投資の勉強と経験を積み、資金ができるとともに、徐々に投資信託から個別株投資に移行する、という感じで進められるとよりいいのかもしれません。