【書評】株より先に「債券と金利」から学ぶべき理由とは?『はじめての日本国債』

私たちが投資する資産として、もっとも身近なものであるはずなのに、意外と遠いところにいると感じられる「日本国債」。
これまでは長らく続いた超低金利という金融環境のせいで、私たちの頭の中から日本国債という存在が遠ざけられてしまっていたのかもしれません。
しかし近年では、日本の政策金利も上昇し、少しずつ国内の債券にも注目が集まるようになってきました。最近でも長期の国債(10年物)の利回りが上昇してきたなどと報道され、日本国債に投資する魅力が高まってきています。
その中でも、個人が購入できる「個人向け国債」は、債券としてはいわば”チート級”とも言える特別な商品性を持っており、次第に購入を検討する人が増えてきたと感じています。
しかし、そもそも「債券」とはなんなのか?
それをちゃんと理解している人は、おそらくとても少ないのではないでしょうか。
本書『はじめての日本国債』は、そんな債券や金利にまつわる疑問を、非常にわかりやすく解き明かしてくれる一冊です。今回は本書を読んで得られた学びと、資産運用における債券の重要性について共有します。
1. NISAブームの今こそ「債券」から学ぶべき理由
NISAやiDeCoの普及に伴い、世の中には株式や投資信託に関する情報があふれています。それに対して債券という資産は、名前こそ耳にするものの、しっかりと知識を身に付けて扱う投資先だという認識はあまり広まっていないと感じます。
ですが、金融商品の本質を正しく理解するためには、むしろ株式よりも先に「債券」から学ぶべきなのではないでしょうか。
実際、バランス型の投資信託などを購入すると、自然とそのポートフォリオには債券が組み込まれています。かつては「資産運用の初心者は、まず債券型の投資信託からスタートするのが王道」と言われていた時代もありました。
「債券は、株式よりもリスクが小さい」
これは金融を学ぶ際によく教わるフレーズであり、多くの人がなんとなく知っていることです。
しかし、私たちは反射的に「リスクが小さい」と認識するほど、本当に債券のことをちゃんと理解できているといえるのでしょうか?
「満期まで保有すれば大丈夫」という情報に、勘違いさせられてはいないでしょうか?
2. 「債券=安全資産」は勘違い? 本書が教えてくれる金利とリスクの本質
債券を理解するうえで、最も大切なキー概念が「金利」です。
一般的に「債券は安全だ」と考えられているのは、満期まで保有していれば基本的に元本を失うことがない(国債の場合)からだと言われています。しかし、実際のマーケットにおける現実はそうではありません。本書を読むと、その理由が非常によく分かります。
債券という投資先は、一言で言えば「金利への投資」です。
- 金利が動けば、債券の市場価格も上下に変動する
- 金利と債券価格はシーソーのように反対に動く
金利は常に変動しています。つまり、途中で売買する可能性のある債券という資産は、株式などと同じ「価格が変動する資産」なのです。
また、仮に満期まで保有して元本割れしなかったとしても、市場金利より低い利率の債券を何年も保有し続けることは、実質的に「機会損失」という損を出しているのと変わりません。
金融理論における「リスク」とは「価格の振れ幅(変動の大きさ)」を意味します。したがって、債券は決して「安全資産」などではなく、株式と同じ「リスク資産」のカテゴリーに分類されます。(※元本を毀損せずに中途換金ができる個人向け国債などは例外的な存在です)
「満期まで持てば元本は守られる」という言葉だけが一人歩きし、勝手に安全だと認識してしまう――これは「リスク」という概念が正しく伝わっていないことが原因なのだと深く納得させられます。
将来の金利変動を予測し、どのような債券(短期か長期かなど)に投資するのが有利なのかを組み立てる。これこそが債券投資本来の投資の仕方なのだと実感させられます。
3. 日銀はどうやって金利を動かしているのか?
金利を理解することは、日本国債への理解に直結します。そのため、本書では「金利」の仕組みについてもページを割いてしっかり解説されています。
たとえばニュースでよく聞く「日本銀行の政策金利」。有名な言葉ですが、その仕組みを正確に答えられる人は稀ではないでしょうか。「日銀が決めた金利がそのまま世の中に反映される」と思われがちですが、そう単純ではありません。
日本国債の金利も、日銀がコントロールしようとする金利も、すべて「市場(マーケット)」が存在します。そこでは世界中の機関投資家である銀行や証券会社などが、それぞれの思惑で売買を行っています。そのような巨大な市場を直接コントロールするのは非常に困難です。
そのため日銀は、自らが直接コントロールしやすい「金融機関が日銀に預けている預金に付与する金利」などを調整することで、目標とする金利へ「無担保コール翌日物金利」を導こうとコントロールしています。
この「無担保コール翌日物金利」のコントロールに加え、時には日銀自らが直接国債を買い入れるといった政策も組み合わせながら、市場全体の金利に影響を与えようとしています。
しかし、どれほど日銀が強力な政策を実施したとしても、国や日銀が金利を一方的に『決定』できるわけではありません。
国債を買う機関投資家や、マーケットを支える証券会社といったプレイヤーたちの意図や思惑が交錯し、市場の需給によって国債の価格が決まります。その結果として形成されるものこそが「金利」だからです。
4. まとめ:金利と債券がわかると、株や不動産が見えてくる
本書からは、日本国債や金利の単なる知識にとどまらず、金融政策などの本質的な基礎知識を学ぶことができます。
手にとる前は「日本国債の本」だと思っていましたが、債券や金利を学ぶことは、それをちょっと改変した資産である「株式」や「不動産」のマーケットを理解することにそのまま繋がるのだと深く実感しました。
株や不動産に比べると、合理的に価格が形成される傾向がある債券投資は、市場の本質を学ぶのに非常に適しています。
この本は、「これから金融や資産運用を本気で学びたい」と考えているすべての人にとって、投資の基盤を作ってくれる本当に素晴らしい一冊だと感じました。
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