『サピエンス全史(上)』に学ぶマネーの本質|なぜ私たちは「紙切れやデータ」のために働くのか?

普段、私たちは当たり前のように「人間」として生活していますが、生物学的に見れば私たちは「ホモ・サピエンス」という一つの種に過ぎません。
歴史をさかのぼると、かつて地球上にはネアンデルタール人やホモ・エレクトスなど、「サピエンス以外のヒト属」が同時に複数存在していた時期がありました。犬に秋田犬やチワワがいるような「品種の違い」ではなく、オランウータンとチンパンジーのような「まったく別の種」です。
では、なぜ他のヒト属はすべて全滅し、私たちホモ・サピエンスだけが生き残り、地球を支配するほどの文明を築けたのでしょうか?
世界的ベストセラー『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)は、その謎を解き明かすとともに、私たちが毎日使っている「お金」の本質について驚くべき視点を与えてくれます。
1. ホモ・サピエンスだけが生き残った「たった一つの理由」
数百万年という人類の長い歴史の中で、サピエンスが文明を持ったのはたかだか過去5,000年程度、科学の力を手に入れたのはほんの数百年前のことです。
身体能力や頭脳で勝っていたかもしれないネアンデルタール人を抑え、サピエンスが生き残れた最大の理由。それは、火や道具の発明ではなく、「存在しないもの(虚構)」を想像し、大勢で共有できる能力を獲得したからだと本書は説明します。
- 他の動物: 目の前にある現実(食べ物、敵、目の前の仲間)しか認識できないため、大きな群れを作れない。
- ホモ・サピエンス: 「神」「国家」「法律」「会社」といった、目に見えない概念(虚構)を大勢で信じることで、見知らぬ人同士でも何万人、何億人という単位で協力できる。
顔も名前も知らない者同士が、同じルールや目的に従って動ける社会を作ったことこそが、サピエンス最大の強みだったのです。
2. お金もまた、人類が生み出した最大の「虚構」である
本書を読み進めると、この「虚構を信じる能力」が、現代のあらゆる仕組みの根底にあることが分かります。宗教も、国家も、法律も、そして私たちが日々追いかけている「お金」も例外ではありません。
一万円札自体はただの印刷された紙切れであり、銀行口座の残高もデジタルな数字に過ぎません。それ自体を食べたり着たりすることはできません。
それでも私たちが「お金」のために働き、貯めようとするのは、社会の全員が「これには価値がある」という虚構(共通のフィクション)を信じているからです。
「何が正しいのか」は時代によって変わる
歴史を振り返れば、王や宗教、奴隷制度など、その時代ごとに人々が信じていた「正しさ」や「価値観」は変化してきました。かつては人を物のように扱う奴隷制が正義とされていた時代(ハンムラビ法典など)もありました。
同じように、現代社会では「お金をたくさん持っている人がすごい」「お金を稼ぐことが正義」という共通のフィクションの中で私たちは生きています。
3. 「虚構」を理解した上で、私たちはどう生きるべきか?
現代の私たちは、お金という「虚構」に支配されているかのように、稼ぐこと・貯めることに必死になっています。お金を持つ人と持たない人の差が広がれば格差となり、生きづらさを感じる人も出てきます。
しかし、皆が信じている「お金」というルールを追いかけることは、今の社会を生き抜くために必要なリアルな手段でもあります。
- 「虚構」を信じる能力があったからこそ → 人類は絶滅を免れ、圧倒的な文明と便利で豊かな暮らしを手に入れた。
- しかし、その能力によって → 格差や不都合、絶え間ない競争や格闘が生まれることもある。
『サピエンス全史』は、単なる昔の歴史本ではありません。「私たちが信じているお金や社会のルールとは一体何なのか?」という根本的な問いを投げかけ、現代を生きる私たちの視野を大きく広げてくれる一冊です。
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