
健康長寿の切り札!?
『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』 吉森 保 (著)
はじめに:健康は、生涯年収を左右する「ヒューマンキャピタル」
今回ご紹介するのは、吉森保氏による『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』です。
NMNやメトホルミン、そしてオートファジーといった分野の研究の発展によって、「不老長寿」が現実のものとしてかなり意識されるようになってきました。
老後の医療費や介護費のことなどを考えると、健康は大きな資産(ヒューマンキャピタル)だと言えます。
健康で長く働けることは、生涯収入を上げ、長期的な資産形成の土台となります。
本書が焦点を当てるオートファジーとは、体内に備わる細胞のリフレッシュ機能です。この機能を活性化させ、細胞を健康に保つことで、健康と若さを維持しようというのが本書の目的です。
1. オートファジーの基本:「細胞のゴミ処理」で若さを保つ
私たちの体は30兆以上の細胞で構成されています。
オートファジーは、細胞内に侵入した細菌やウイルスを退治したり、不要なたんぱく質(細胞のゴミ)を除去したりする、いわば細胞単位のメンテナンス機能です。
この機能が正常に働けば、体は健康で若々しさを維持できる、という理屈は非常に分かりやすく、魅力的です。
2. 【情報の矛盾点】食事制限と「食べる」ことのジレンマ
本書を読んで、疑問に感じる点がありました。それは、オートファジーの活性化メカニズムと、提案される食事法の間の矛盾です。
❌ 矛盾点:オートファジーは、飢餓で活性化するのに、なぜ「食事術」?
一般的に、オートファジーは「飢餓状態」、つまり食事をしない時間が長いときや、カロリー制限によって活性化することが知られています。
それにも関わらず、本書では「不老長寿を実現するための食事法」として、食べることを前提とした具体的なレシピや食品を紹介しています。
確かに、オートファジーの活性化は、大雑把に言えば食事量を減らす(カロリー制限)だけでも達成できるとされていますが、「食事をしない効果」と「特定の食品を食べる効果」の差について、具体的なエビデンスに基づいた比較や説明が不足している印象は否めません。
3. 健康情報において私たちが持つべき「警戒心」
この本は、オートファジーの仕組み自体は分かりやすく解説していますが、その効果を巡る情報の提示方法には、読者として高い情報リテラシーをもって接する必要があります。
金融情報と同じく、健康・自己投資に関する情報にも、エビデンスが曖昧なものが多く存在します。
私たちが学べる教訓は、「魅力的な情報ほど、その根拠と実践の効果を冷静に見極めるべきだ」ということです。
- 単なる理論でなく、実践と検証に基づいているか?
- 「食べる」ことを勧める背景に、商品の販売といった別の目的はないか?
これは、金融商品の選定において「高利回り」という魅力的な情報に飛びつくことの危険性と全く同じです。
4. まとめ:知識と情報リテラシーを高めるための「自己投資」
『不老長寿の食事術』は、オートファジーという革新的なテーマを知るきっかけとしては有益です。
大切なのは、本をきっかけに「自分の健康に対する意識」を高め、同時に「情報の真偽を見極めるスキル」を磨くことです。
健康も資産も、正しい知識と判断力こそが未来を守る最大の武器となります。