投資の視点が変わる!『日本のすごい先端科学技術』から学ぶ、強い企業の見極め方

科学技術は「ビジネス」と「投資」のヒントの宝庫
「科学技術」と聞くと、難しくて自分には関係ないテーマだと感じる方も多いかもしれません。
しかし、スマートフォンや洗剤、建築物のコンクリートから塗料に至るまで、最先端の技術は私たちの身近な生活に密接に関わっているということを本書から知ることができます。
実は、こうした科学技術の背景を知ることは、単なる教養にとどまらず、「どのような企業が長期的に成長するのか」というビジネスや投資の視点を養う上で役に立つこともあります。また、自分たちが投資したお金が、どんなところに活用されているのかを知る良いきっかけになることもあります。
今回ご紹介する書籍『未来を見通すビジネス教養 日本のすごい先端科学技術』(橋本幸治 著)は、日本が世界に誇る20の先端技術をわかりやすく解説した一冊です。
本書を通じて、企業の「本当の強さ」を見極めるためのヒントを得ることができるかもしれません。
なぜ投資家は「基礎研究」に注目すべきなのか? 花王の驚異的な洗浄技術
本書で紹介されている事例の一つに、日用品メーカーである花王の最先端の洗浄技術がありました。
洗剤の主成分である界面活性剤は、水と油(皮脂)を結びつけて汚れを落とす役割を果たします。しかし花王の開発した技術は、単にすべての皮脂を落とすだけでなく、「肌に悪い皮脂」と「良い皮脂」を区別し、悪いものだけを選んで洗い流すことができるというのです。
一見、簡単そうに聞こえるかもしれませんが、本来見境なく作用するはずの界面活性剤に「選別」させるというのは、非常に複雑で不思議な技術です。
著者は、この花王のすごさは「基礎研究力」にあると説明しています。
すぐにビジネスにつながることになりそうな応用研究の分野だけでなく、自然の現象などに対して「なぜそうなるのか?」という根本的で当たり前の疑問に対して、地道な基礎研究を怠らない姿勢が、こうした驚異的な技術を生み出しているといいます。
かのアイザック・ニュートンは「もし私が人より遠くまで見渡すことができたとしたら、それは巨人の肩の上に立っていたからだ」という言葉を残しました。
これは、偉大な発明や発見は、先人たちが築いた知見(基礎研究)の積み重ねの上に成り立っているということを言っています。
日用品から洗濯洗剤まで、幅広い分野の研究知見が蓄積されている企業だからこそ成し得る業なのかもしれません。
偉大な投資家も重視する「研究開発費」という指標
この「基礎研究」を重視する姿勢は、株式投資における企業分析においても極めて重要です。
投資の神様ウォーレン・バフェットが、自身の投資手法に多大な影響を受けたと語る人物の一人にフィリップ・フィッシャーという人がいます。
フィッシャーは企業分析を行う際、「その企業が研究開発費にどれだけの予算を割いているか」という視点を非常に大切にしていたといいます。
そして花王もまた、同業他社と比較して多額の資金を研究開発費に投じています。日々培ってきた科学力や技術力、そして基礎研究をおろそかにしない姿勢こそが、新しい価値を生み出す原動力であり、ひいては企業の「根源的な力(稼ぐ力)」そのものなのだと感じます。
科学技術の裏側にある企業のスタンスを知ることは、有望な投資先を見つけるための重要なヒントとなることがあるかもしれません。
専門知識ゼロでも読める! ワクワクする20の先端技術
本書では、花王の事例のほかにも、全部で20個の興味深い科学技術が紹介されています。
個人的に特に目を引いたのは、「宇宙太陽光発電所計画」です。宇宙空間に太陽光発電システムを構築し、そこで作ったエネルギーを地上に届けるというSFのような話ですが、実はその技術において日本は世界の最先端を走っていると言います。
AI(人工知能)などのトレンド技術も重要ですが、視野を広げて多様な科学技術に触れることは、ビジネスパーソンとしての引き出しを増やし、未来への「夢」を感じさせてくれます。
また、本書の最大の特徴は、科学技術の細かな専門用語やサイエンスの複雑な仕組みを極力省いて説明している点です。技術的な深掘りが少ない分、理系用語にアレルギーがある方でも、全体像をスムーズに掴み、最後までスラスラと読み進めることができると感じました。
