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【相談事例】買った株のマイナスが気になって売るべきか悩む…「すべての株をプラスにしたい」という呪縛の解き方

2026 6/29
Moneyコラム 投資と資産運用 相談事例
2026年6月29日

「買った株にマイナスがあると落ち着かない」「全勝して利益を出したい」というお悩みに答える、投資のマインドセット(考え方)を整理したコラムです。

目次

1. 相談内容

相談者:投資歴1年

個別株投資を始めて1年になります。

いくつか銘柄を選んで購入したのですが、その中に値下がりしてマイナスになっているものがあり、気になって仕方がありません。

正直、できれば保有しているすべての株がプラスになってほしいと思っています。

「塩漬けは良くない」とよく聞くので、マイナスが気になってつい売ってしまおうか(損切りしようか)と悩んでいます。

周りの人はみんな上手くいっているように見えて焦ります。私はどのように株と向き合えばいいのでしょうか?

アドバイスをいただけると幸いです。

2. 回答事例

「自分が選んだ株なのだから、すべてプラスになってほしい」と願うのは、投資家としてごく自然な感情です。

しかし、最初にお伝えしたいのは、「保有しているすべての株をプラスにする(=全勝する)」というのは、プロの投資家でも不可能な、高すぎる目標であるということです。

この「全勝したい」という呪縛を解き、マイナスがあっても穏やかな気持ちで長期的に利益を出せるようになるための、3つのステップをお話しします。

① 「買った株はすべて上がる」というおごりを捨てる

まず、「自分が選んで買った株は、すべて上がるはずだ」という期待を思い切って手放しましょう。厳しいようですが、株価の短期的な値動きは、どれほど勉強しても「運」の要素が非常に大きいのが現実です。

私たちが「この株は絶対に上がる!」と確信して購入ボタンを押すその裏には、「この株はこれ以上上がらない(あるいは今後下がる)」と判断して手放している売り手が必ず存在します。

投資の世界には、「よりバカ理論(Greater Fool Theory)」という言葉があります。これは、「どんなに高値で株を買っても、自分よりさらに高値で買ってくれる『もっとバカな人(=次の買い手)』がいれば、結果的に儲かるはずだ」と無意識に考えてしまう投資心理のことです。

金融理論(効率的市場仮説)によれば、市場の価格は、常に多くの賢明な投資家たちの売買によって適正に形成されていると考えられています。

つまり、「自分だけがこの株の価値を見抜いており、絶対に上がる」と盲信する行為は、見方を裏返せば「市場の総意(みんな)よりも自分の方が賢く、自分の後にさらに愚かな買い手が、もっと高い価格で買ってくれるはずだ」と主張しているのと同じになってしまいます。

実は、私も昔はまったく同じように考えていた時期がありました。しかし、結果的には、ほとんどのケースで自分よりも市場の判断の方が正しかったというのが現実でした。

「自分は市場よりも賢い」という前提はいかに無謀で、おごりを含んだものであるか。まずは「外れて当然、マイナスがあって当然」という謙虚な視点を持つことからスタートすることが必要だと思っています。

② 分散投資は「外れ(マイナス)」を引き受けるゲーム

個別株投資で長期的に利益を残すためには、一つの銘柄に固執するのをやめ、投資を「確率のゲーム」として捉える必要があります。

競馬で複数の馬に賭けてリスクを分散するように、株式投資における「分散」の目的は、確率的な「当たり」と「外れ」の双方を、あらかじめ想定の範囲内に入れておくことです。最初から「マイナスになる銘柄」が出ることを前提に、ポートフォリオ(資産の組み合わせ)を組むのです。

投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットでさえ、彼の長い投資キャリアにおいて**「自分がこれまでに選んだ銘柄の大部分は、ごく平凡(あるいは失敗)なものだった。本当に素晴らしい成果を上げたのは、わずか十数個の意思決定のおかげだ」**と告白しています。

バフェットほどの天才ですら、選んだ銘柄の半分以上は期待外れに終わるのです。一般の投資家が「すべての持ち株がプラス(勝率100%)」を狙おうとすること自体が、そもそもナンセンスだと言わざるを得ません。

③ 「目先の値動き」から「企業のオーナー」へ視点を転換する

相談者様は、少し値下がりしただけで不安になり、「気になるから売ってしまおうか」と悩まれていました。かつて私も、チャートの細かな値動きを見ながら短期売買を繰り返したことがありますが、結果的には、資産は全く増えませんでした。

一方で、企業の成長を信じて年単位でじっくり保有した銘柄からは、数倍になるようなリターンを手にできたことがこれまでに何度かありました。

短期間で何度も「気になって売る」を繰り返すことは、コストを増やすだけでなく、あなたの心理的余裕を奪い、さらなる判断ミスを誘発するのだと思います。

短期売買が上手くいかないのは、取引の手数料や税金よりも、その心理的な問題(焦りや不安、欲)の方が影響が大きいのではないかと、個人的には感じています。

そもそも、株式投資の本質は、「その企業(事業)の共同オーナーになること」です。投資リターンの源泉は、その企業が日々の事業活動で生み出す「リアルな利益」に他からないと言います。

それなのに、話題性や人気だけで銘柄を選んでいれば、企業や利益の成長よりも、株価の動きばかりを気にするようになり、上手くいかなくなると嫌になるものです。

株式投資の本質的視点に立てば、株価の値動きは二の次の情報になります。「その企業を信じてお金を託した結果、思った以上に利益が出た」――そのくらいの姿勢で臨んだ方が、少なくとも私にとっては、大きなリターンを生み出してくれました。

目先の株価の上下は「ただのノイズ」だと考えています。

結論:目先の損失は「目的地にたどり着くためのコスト」

すべての銘柄でプラスを出す必要は、一切ありません。むしろそれを望むこと自体が、投資の本質から外れた「間違った期待」であると言っても過言ではありません。

株式投資というのは、どれほど知的で高尚なものに見えても、本質的には競馬や宝くじなどと似たような「確率のゲーム」であることを認識しましょう。

偉大な先人たちでさえ、選択の多くを外しています。

自分にバフェット以上の銘柄選択センスがあると過信せず、「ポートフォリオの一部の銘柄が、長期的に大きなリターンを連れてきてくれれば、全体で大成功」と割り切れることが理想だと考えています。

長期的に保有するに値する「本物の企業」をいくつか見つけることさえできていれば、日々の細かなマイナスは、目的地にたどり着くための「確率的なコスト(必要経費)」に過ぎないのです。

少し肩の力を抜いて、「全勝」を目指すのをやめることから始めてみてください。応援しています!

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この記事を書いた人

田仲 幹生のアバター 田仲 幹生 1級FP技能士

生命保険会社、税理士事務所での勤務を経てファイナンシャルアドバイザーとして独立。数多くの相談者に向き合ってきた経験と、自身が実践する資産運用のノウハウを活かした個別相談やマネー講座が好評です。

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