『トレンドフォロー戦略の理論と実践 金融危機に負けない賢者の投資法』 アレックス・グレイザーマン他(著)

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トレンドフォロー戦略は迷信じゃない?

ファイナンシャルプランナーなどの、多くの資産運用のアドバイザーや有識者たちの間で、「テクニカル分析に基づいた短期売買は、投機でありギャンブル的なものなので、やってはいけないこと」とだとよく言われています。

「株式投資は投資なので、デイトレーダーのような投機的なやり方は良くない。」というのが共通の認識のようです。しかし、果たして本当にそうなのだろうか?

そしてまた、デイトレーダーのような株式投資をやってはいけないと説明する有識者の多くが、「長期間保有するバイ&ホールド」で運用することをおすすめしている。中には、「長期投資をしていれば、損する可能性は少ない」とまでいう人もいる。でもこれは、本当に正しい考え方なのだろうか?

『ウォール街のランダムウォーカー』という書籍の帯に、「サミュエルソンはなぜ投資先をバークシャーにしたのか」という文言がありました。

ポール・サミュエルソンは、『効率的市場仮説』を指示している経済学者として、とても有名な人です。つまり、ポール・サミュエルソンという経済学者は、銘柄を選別したりデイトレーダーのような短期売買で運用することを否定し、インデックスファンドへのバイ&ホールド(長期投資)を推奨している有識者の代表例だということです。

ということは、「サミュエルソンはなぜ投資先をバークシャーにしたのか」という言葉の意味には、「銘柄選別や短期売買のような投資の仕方はダメだと言っているような人が、なぜ投資のタイミングを駆使したり、投資銘柄を選別して運用しているウォーレン・バフェットの投資会社に投資をしたのか?(インデックスファンドとは、そのあり方が真逆のような存在)」という事に対しての皮肉が込められているわけです。

『ウォール街のランダムウォーカー』という本では、金融市場のモメンタム効果について説明しています。つまり、上昇しているものは、その後も上昇する傾向があるという、効率的市場仮説で言っているものとは全然違う、とても効率的とは言えない株価の形成過程が、現実には見られると言っています。

具体的には、単純に「1年前の価格よりも高値にあるときに買って、それ以下になったら売る」というルールを守るだけで、意外と上手くいくと説明しています。

つまりは、「上がるトレンドがあるところについていけ」という『トレンドフォロー』という投機的な投資戦略が、実は有効だという事を示しているわけです。

この本は、そんな『トレンドフォロー戦略』を科学的に、そして理論的に解説している内容となっています。

トレンドフォロー戦略をポートフォリオに取り入れる?

トレンドフォロー戦略が、理論的にも有効であるということが、本書の第3部を読むとよく理解できます。

そして、トレンドフォロー戦略の最大の魅力は、クライシスに強いということがあります。クライシスとは、その名の通り、突然相場が大きく崩れる、大暴落といった局面のことを指しています。

トレンドフォローという戦略は、短期売買という戦略的な仕組み上、長期投資と比べても、大きな損失を回避できると考えられています。また、買いだけでなく売りから入る方法も、トレンドフォロー戦略には組み込まれているため、大きく相場が崩れる局面(クライシス)こそが、その真価を発揮する時だと言えます。

実は、多くの有識者が推奨する、バイ&ホールドという投資戦略には大きな弱点があります。

案外見過ごされがちなことなのですが、クライシスに出合うと、想定以上の大きな損失を負うことになります。そしてバイ&ホールド戦略では、そのクライシスによって生じる大きな損失を回避することができません。というよりも、クライシスによる損失を受け入れることは、バイ&ホールド戦略にとっては、戦略の一部になっているのかもしれません。

つまり、「運が悪かったら、損失覚悟。何事もあきらめが肝心。」というのが、バイ&ホールド戦略の大きな問題点です。

しかし、市場では十数年に一度ぐらいの感覚で、金融市場に大きな崩落が起きてきています。正直その頻度としては、「運が悪かった」ではすまないと思っています。さらにひどい時には、金融市場の崩壊をまともに受けることで、最悪、総資産の半分以上を失うことさえあります。

そんな中で、まともな精神を保ったまま、その資産が半分になってしまったことを、「仕方がない」の一言でかたずけ、今までと同じように投資を続けることが、私たちにできることなのだろうか?

バイ&ホールド投資戦略の推奨派は、このことを軽く見ているのではないだろうかと感じています。おそらく理屈だけ語っていて、現実が見えていないのでしょう。

実際にその資産が半分以下になるという金融市場の崩落を味わった身からすると、決して軽く見れるような問題ではないと感じています。

この本では、トレンドフォローのクライシス時に有利になる性質を利用して、バイ&ホールドの投資戦略とトレンドフォローの投資戦略を組み合わせた、ポートフォリオを作ってみてはどうかと提案しています。

正直、専門用語が多くて、理解も難しく、内容の把握にはとても苦労することだろうと思いますが、本書で言う事の、ちょっとしたポイントを知るだけでもかなり参考になるのではないかと思いました。

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