投資信託で投資をする目的
「投資信託に投資をする目的は、将来のためだ」という人はとても多い。
しかし実際には、介護や長生きなど、将来に対する漠然とした不安から、80歳を過ぎても節約志向がなくならず、せっかくの貯えも死ぬまでほとんど使わなかった、なんてことも少なくないようです。
特に、現役時代から将来のことを考え、堅実に蓄えてきた人ほど、その傾向が強いように感じます。
もし運用に成功して、投資信託でお金を増やすことが出来たとしても、結局使わなかったら、別に投資信託じゃやなくたって、普通に貯金するのと何ら変わりません。
むしろかえって投資信託で蓄えていると、預貯金より価格変動が激しいために、介護や長生きの不安に合わせて、投資信託の値下がり不安も重なって、預貯金以上にお金の引き出しを躊躇してしまうようになるかもしれません。
せっかく蓄えた投資信託、使うために取り崩すといっても、具体的にはどうやって取り崩したらいいのでしょうか?
大きく取り崩してしまっても、その後その投資信託が大きく値上がりしたら、なんかもったいない気分になるし。
かといって、逆に少ししか取り崩さなければ、今度はほとんどの貯蓄を残したまま死んでしまうかもしれない。
預貯金のような価格変動がない資産を取り崩すならば、毎月いくらづつ引き落とすと、あと何年持つのかがはっきりしていて、計画が立ちやすいですが、常に価格変動をしている投資信託の場合にはそうは行きません。
一部のサイトでは、投資信託を取り崩した場合の長期のシミュレーションができるものもありますが、現実がそのシミュレーション通りになるとは限らないし、むしろその通りにならない可能性の方が、圧倒的に高い。
自動的に取り崩すことができる「毎月分配型投資信託」
投資信託の取り崩しと言えば、『毎月分配型』と呼ばれる投資信託が人気です。
ただ以前、『タコ足分配』や『割高なコスト』といった問題が指摘されたことで、一時『毎月分配型』の投資信託は人気がなくなったかのように思われましたが、定期収入が欲しいというその高いニーズから、今でも根強い人気があるようです。
投資信託を購入する理由として、値上がり益よりも、手取りの収入を増やしたいという思いもあるようです。
『毎月分配型』の投資信託は、まさにそのニーズにあっています。
問題を指摘された後でも、毎月分配型投資信託の人気が衰えないのもわかる気がします。
しかし金融機関は、毎月分配型投資信託で、より高い分配金利回りを実現しようとして、投資信託が投資する先から生み出される利益以上に分配してしまうことがある。いわゆる『タコ足分配』と言われるものです。
この『タコ足分配』は、詐欺の世界の、『ポンジスキーム』に似ています。
募集した投資元本を投資せずに、先に投資信託を買っている人たちの分配金として配る。これでは、投資信託としての意味がありません。
『毎月分配型投資信託』という仕組みに問題があることは、否定できない気がします。
「毎月分配型投資信託がだめなら、投資信託からお金を引き出すには、どうしたらいいのだろうか?」
そこで候補に挙がってくるのが、証券会社の行っている『定期売却サービス』です。
取り崩し方法は、定額か定率か?
証券会社の『投資信託の定期売却サービス』。一度設定すると、定期的に自動で売却して、現金で受け取れるようになります。
ただ、この定期的な売却も、証券会社によっては、『定率』で売却する場合と、『定額』で売却する場合、もしくはその両方から選択する場合があります。
基本的には、投資信託などのリスク資産からお金を取り崩す方法は、『定率』だと言われています。
例えば、トリニティ大学の研究結果によると、株式と債券に半分づつ投資するポートフォリオで運用した場合、年間に資産の4%分の取り崩しを行ったものとして過去のシミュレーションしてみると、大恐慌などの経済環境を含めても、約30年間資金が枯渇することがなかったという例があります。
仕事をリタイヤして老後の期間としては、良い感じの年数です。
これによって、この4%程度の定率での取り崩しが、投資信託を取り崩すイメージとしてちょうどいいということで、『4%ルール』などと呼ばれています。
ところが、定率で取り崩しつづけると、一時的に資産額が大きく値下がりした場合には、取り崩しできる金額もそれに伴って大きく減ることになります。
現実問題として、これでは日々の生活費としては使いにくいのではないでしょうか?
たとえば、資産1,000万円だと年間40万円(4%)の取り崩しができるわけですが、経済環境が悪化して、資産額が500万円に目減りしてしまったら、その年は20万円(4%)しか取り崩すことができなくなってしまいます。
これでは、生活に計画性も立てられず、なかなか難しいことになってきます。
投資信託の定期売却。簡単なようで、なかなか複雑な話なのかもしれませんね。
ただそれでも、毎月分配型投資信託を購入して分配金を貰うぐらいなら、低コストのインデックスファンドなどに積み立てて、毎月定期的に売却して現金化する定期売却サービスの方が、利用価値は高いのではないかと思います。
もし『定額』か『定率』か、で悩むならば、『定額』と『定率』の両方を利用するということだって考えられます。
たとえば、比較的価格変動の少ない資産の取り崩しを『定額』とし、株式のような変動の大きいものを『定率』とするという考え方もありなのかもしれません。