クラウドバンクの遅延増加の現状と背景

個人が直接的に融資先に資金を貸し付け、高い利回りを期待できるとして注目を集めてきたソーシャルレンディング。しかし、その裏では、過去に多くのサービスが不正行為や不適切な運営により、投資家に多大な損失を与えてきました。

具体的には、太陽光発電への融資を謳った「グリーンインフラレンディング」など業界最大手だった「maneo(マネオ)」のサービス群(ガイアファンディングなど)、極めて高い利回りで投資家を誘った「みんなのクレジット」、不動産担保融資中心の「ラッキーバンク」、そして大手金融機関の子会社だった「SBIソーシャルレンディング」など、枚挙にいとまがありません。

しかしそんな中でも、長年にわたり遅延や延滞をほとんど発生させることなくサービスを続けてこられたがクラウドバンクでした。

クラウドバンクは、日本のソーシャルレンディング業界でも早くからサービスを始め、一時期は行政処分などの問題も発生はしましたが、結果的には投資家にほとんど損をさせることなく、ソーシャルレンディング業界の主要プレーヤーの一つとして長年運営されてきました。

しかし、そんなクラウドバンクでも、最近償還や分配金の遅延が増加傾向になってきています。具体的には、太陽光発電や中小企業支援型のファンドに遅延が目立つようになってきました。ほかにもバイオマス発電関連にも遅延が出てきています。

その背景には、金利の上昇が影響しているのではないかという見方が強まっています。

太陽光発電などの再生可能エネルギー開発や不動産関連事業は、その性質上、大規模な初期投資が必要となり、資金調達の多くを借り入れに依存しています。 つまり、金利が上昇すると、これらの事業者は借り入れコストの増加という形で、ダイレクトにその影響を受けます。

金利上昇による資金調達コストの増加は、事業の収益性を圧迫し、結果として事業計画の遅延や業績の悪化に直結しかねません。

クラウドバンクのファンドにおける償還や分配金の遅延の背景には、このような理由があるのではないかと考えられているようです。

投資家が今すべきこと

ソーシャルレンディングが普及したことによって、今まで個人では、投資することができなかった案件にまで投資する事ができるようになりました。このことは個人投資家にとってソーシャルレンディング業界の大きな貢献であると思います。

金利が高くて、比較的リスクが低めな融資というのは、今まで大手金融機関の独断上でしたが、ソーシャルレンディングによって個人も参入できるようになってきました。しかし、そのような投資であっても、リスクの取り方を間違えれば大きな痛手となる可能性がある事を今回は考えさせられました。

グリーンインフラレンディングなどの今までのソーシャルレンディングの問題の多くは、貸付先の問題というよりも、ソーシャルレンディングを運営している業者の問題という側面が強かった。

公には太陽光発電建設に融資をしていると言いながら、投資家から集めたお金を実際には違うところに金を使っていたり。集めたお金を融資には使っておらず、他の投資家への分配金や償還につかっていたり(ポンジスキーム)。返済が滞った時のために担保を取っていると安心させておきながら、実際には担保としていなかったり、もしくは価値の低いものを担保としていたり。と一種の詐欺のようなやり方で運営されていたことで、問題になったというものが多かったわけです。

今回のクラウドバンクの案件も似たような理由からなのか、それともクラウドバンクの問題ではなく、貸付先の問題なのか。クラウドバンクからのレポートなどから想像するには、おそらく後者である可能性の方が高いとは思われますが、結局一個人でわかる範囲なんてたかが知れています。

融資先はもちろん、ソーシャルレンディング事業者についても、私たちには、正確な情報は「わからない」と疑って考えないといけないのかもしれません。

この「わからない」こそが、ソーシャルレンディング最大のリスクになっていると思われます。

ソーシャルレンディングの評価と今後の投資戦略

ソーシャルレンディング最大のリスクは、私たちが貸し付けたお金が、どこにどう使われているのか、正確なところは「わからない」ということにあります。

ソーシャルレンディング業者も、投資先の情報をいろいろ公開するようにして投資を募ってはいますが、所詮私たち一個人にわかることなど、たかが知れているという事を思い知らされます。

それでも、もし遅延も延滞も無ければ、安定的にほぼ確実な利益が、定期的に入ってくるというのは大きな利点だと思っています。株式や投資信託のような値動きもなく、貸付時に決められた利回りが、ほぼ安定的に入ってくるので、利息で利息を稼ぐことが可能になり、まさに「複利運用」を実現することができるようになります。(値動きのある資産での複利運用は、実際には複利の計算とはなっていないと言われています。)

ただ問題なのは、「ほとんど情報がなく、よくわからない」ために、遅延や延滞のリスク、そしてソーシャルレンディング事業者のリスクがあるというのと、それを事前に予測することがほぼ不可能だという事です。

そう考えると、ソーシャルレンディングで投資をする際に必要なリスク管理の方法は、「分散投資」という言葉に尽きるのかもしれません。

とにかくできるだけ幅広く分散する。貸付先を細かく分散し、ソーシャルレンディング業者も分散して投資し、貸付目的も分散させる。

わかりやすく言えば、複数のソーシャルレンディング事業者を使いつつ、また一つのソーシャルレンディング事業者の中でも、できるだけ数多くのファンドに細かく分散する。

一つ一つのファンドやソーシャルレンディング事業者のリスクは、はっきり言ってわからないけれど、多数に分散させることで、確率でリスクをコントロールする。

いわば、金融機関が行っていることと同じことなのかもしれません。

私たちは、ソーシャルレンディングによって、今まで大手の金融機関などが投資していた先に投資できるようになってきました。しかし、それだからと言って、投資の仕方まで変わるのかというと、そういうわけではないのかもしれない。

今まで大手の金融機関が投資してきた案件に、一個人が投資できるようになったのならば、その一個人は、大手の金融機関が投資をしている方法で、そこに投資をしなければいけない、という事なのかもしれません。

投資先が高度になったとしても結局「分散投資」という投資の原点に戻る。改めてこの「分散投資」の価値を考えさせられました。