『SAME AS EVER この不確実な世界で成功する人生戦略の立て方: 人の「行動原理」が未来を決める』 モーガン・ハウセル (著)

言われてみれば当たり前のことでも、私たちはその話を聞くまで、その事実に気づかないということが意外と多くあります。

そして、そうした私たちの見落としている「当たり前」の中にこそ、本当に必要な知識が隠されているものです。

この本は、まさにそれを感じさせてくれる一冊でした。

著者は、世界的ベストセラー『サイコロジー・オブ・マネー』の著者であるモーガン・ハウセル氏です。

今回も期待通り、深い洞察に満ちた内容となっていました。

『サイコロジー・オブ・マネー』

お金の話は、数理的に考えるのが良いと思われている気がします。ファイナンシャルプランナーなどが、数字でシミュレーションを行い、数値として導き出されたもので、合理的に判断する。これが、正しいお金の考え方だと思ってはいないでしょうか? 住宅ローンの返済計画書をできるだけ詳細にして作ったり、リスクを統計的に数値化して投資の判断に使ったり、高度な数学や会計の知識など…

変わりゆく世界の中で、「決して変わることのないもの」

複雑に変化し続けるこの世界に存在する普遍的なもの、そして不確実な状況下でも決して揺らぐことのない物事の考え方。この本が扱うのは、まさにそうしたテーマです。

私たちは、そうした普遍的な真理をどこかで知っているつもりでいます。しかし実際には、それらを正しく認識できていないばかりか、複雑な世界だからこそ、より合理的に物事を捉えようとしてしまいがちです。

しかし、この不確実な世において、合理性を追求することが、かえって本質を見誤る原因となることもあるのかもしれません。

本書を読むと、この世の事象を理解するには、合理性よりも、ある程度の曖昧さを受け入れる方が良いということが、深く理解できます。

世の中の出来事が確率的に動いている以上、「確実にこうなる」と言い切れるものは何もない、と考えるべきでしょう。そして、不確実なはずの私たちが行う「未来予測」に対しては、決して過信すべきではありません。

それにもかかわらず、私たちは著名人や賢いとされている人たちの未来予測に頼り、将来を予測しながら行動しようとしています。

しかし、そうではありません。この世界にはどのような時代になっても変わらない普遍的な「軸」があり、私たちは未来を予測して行動しようとするよりも、今この瞬間、その普遍的な軸の上に立っていることこそが重要だと、本書は教えてくれます。

そうすることによって、予測すること自体を意味のないものとすることができるようになります。

数々の成功した著名な起業家や投資家たちは、自分や周囲の予測に振り回されることなく、その普遍的な軸の上に立つことで成功してきた感があります。

複雑で不確実な世界ですから、彼らの思い通り、考えた通りに、ことが進まなかったことも多々あったかもしれません。しかし彼らは、自分の信じる軸からぶれることなく、それを貫き通すことで成功してきました。

私たちが行動の指針とするべき、本当に必要なことというのは、驚くほどシンプルなものなのでしょう。

しかし、私たちはそのシンプルな答えだけでは満足することができず、物事を複雑にしたがる性分を持っています。そして、時に不必要に複雑化してしまうことで、本来のシンプルな軸から逸れてしまうことも少なくありません。

この本は、私たちが本当に持つべき「軸」とは何か、その気づきを与えてくれました。

この気づきは、私生活、ビジネス、そして投資といったあらゆる場面で活かせる、非常に価値あるものだと感じています。