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『証券会社がひた隠す米国債投資法』 杉山暢達(著)

お金や家計に関する本

知る人ぞ知る投資法?

「証券会社がひた隠す。」こういう文言はやっぱり惹かれてしまいます。隠す理由、それは、「金融機関が儲からず、投資家が儲かる商品だから!」だと思うからです。

金融機関とその顧客は利益相反関係、金融機関が儲かれば投資家は儲からない。逆に、投資家が儲かりやすい商品は、金融機関が儲からないことがある。

なぜなら、金融機関の行っている事業の本質は、投資家の資産からピンハネするだからです。

「個別株やETFよりも投資信託を買ってほしい。」、「個人向け国債よりも仕組債を薦めたい。」、「外貨預金や投資信託よりも、外貨建て生命保険を売りたい。」、金融機関が積極的に販売したいと思っているような商品は、どれも本質的には似たようなものなのに、商品内容が違うだけで手数料が高くなっているものが多い。

本書の中でもでてくる話ですが、金融機関は、事業を行うことを目的とした企業である以上、儲かりたいと考えるのは当然のことです。

しかし、個人にとっては手数料が高い商品だと、全然儲からなくなるので、金融機関が薦める商品の多くは、個人にとってはリスクの割にあまり儲からない商品であることが多くなってしまう。

つまりは、本当に個人が得をする商品というのは、金融機関があまり勧めたがらない手数料の安い商品の中にこそ見つけられる可能性が高いということです。

米国国債に投資する?

この本で登場する投資先は、米国国債です。

米国国債は、ほぼノーリスク(為替リスクは別ですが)と言える商品だと考えらえています。30年の長期米国債を買ったら、30年後にデフォルトになっている心配もほとんどすることがないと思われます。

しかも、利回りの高さも魅力的で、年利3%ぐらいがあれば、30年後には、米ドル建てではあるけれど、ほぼ確実に元本を倍にできる商品ということになります。

ノーリスクでそこそこのリターンが望める投資先となれば、検討する価値が出てきます。例えば、同じぐらいのリターンを想定している投資信託と比較するなら、米国国債の方が有利かもしれないわけです。

この本でお勧めしている米国債券は、ゼロクーポン債と呼ばれる商品です。

ゼロクーポン債とは、その名前の通り、クーポンがゼロ、つまり利息の受け取りがない債券のことです。ただ利息の受け取りがないかわりに、購入時に債券の額面から利率分を割り引いて、額面よりも安い価格で購入することができる商品です。

例えば、額面金額10,000ドルの米国債券(ゼロクーポン)を額面金額の45%で販売という場合。4,500ドルでこの債券を購入すると。満期の30年後に、10,000ドルになって還ってくるというわけです。

ほぼノーリスクで、満期の時に確実に「増えて」受け取ることが確定している投資商品です。

このゼロクーポン債の良さは、利息を受け取らないことで、自動で複利運用ができているところです。

利息が受け取れる「利付債」というのもありますが、こちらだと、利息を受け取るたびに再投資しないといけないのが手間です。

その点、複利の効果を確実に実行できるというのがゼロクーポン債のメリットです。

ゼロクーポン債でライフプランニング。

本書では、このゼロクーポン債のライフプランに合わせた具体的な使い方を紹介しています。

実は、この本の内容は、米国債券という商品についてではなく、ライフプランの内容の方が強かったです。ライフプランの中でも、特に老後の生活費の準備の仕方について詳しく書かれており、その老後資金の準備に米国債券のゼロクーポン債を使ってみたらどうかという提案をしています。

考えてみれば、債券の話を本で詳細に説明しても、読者からしたらほとんど魅力のない本になってしまいかねません。その点を考えれば、ライフプランニングの内容が強くなることは自然なことだと思いました。

この本の内容を理解してくると、「ドル建ての終身保険」や「ドル建ての年金保険」といった商品は確実に不要だということに気づくことになります。

はっきりいえば、この本の内容通りに実行したら、ドル建ての生命保険に、お金をつぎ込む理由が全くなくなります。もしすでにドル建ての生命保険商品に加入している人がこの本を読んだら、きっと『後悔』するのではないかと感じました。

この本の中で紹介されたエピソードの一つに、保険会社の営業職員が、米国国債ではなく保険を使うことの良さについて散々議論した挙句、最終的に米国国債の方がいいことを認めて、その保険の営業職員自身もドル建ての生命保険ではなく、「米国国債を買うことにした」という話が紹介されています。

これは、当然の結果と言えるのではないでしょうか、『ドル建てでの元本保全性』、『運用コストの安さ』、『流動性(解約や売買時の手数料やペナルティなど)』、すべてにおいて保険よりも米国債の方が優秀です。

もっというなら、この本で書かれたような米国債の運用を、生命保険会社が代わりにやることで、高い手数料を取っているのが、ドル建ての生命保険みたいなものです。

しかし、この本の内容で、どうしても疑問に思うところがありました。それは、将来のドルと円の関係です。

この本の著者は、日本は今後国力が低下してくことになるため、長期的には円安になるという想定をしていますが、国力が弱まるからといって円安になると安易につなげるのはどうかと思ってもいます。

実際の為替変動を見ていて、国力さだけが為替レートを決めているとは言えないし、なにより、今の通貨制度があと30年後も続いているのかだって疑わしいところがあるものです。

ですがそれでも、この本の投資戦略は十分に価値のあるものになっていると思いました。

米国国債に興味がある人というよりも、将来のライフプランをどうしたらいいだろうと考えている人にこそ読んでもらいたいと思う本でした。

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