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『それはあくまで偶然です:運と迷信の統計学』 ジェフリー・S・ローゼンタール(著)

経済や科学、その他の本

投資をするなら、知っておきたい偶然の話。

本書は、別に投資家のために書かれた本というわけではないけれど、投資をするのならこの本で取り扱っている『たまたま(偶然)』についての話は、ぜひ知っておきたいところです。本当なら、知っておきたいではなく、知っておくべきなのかもしれません。

投資に関する書籍で、『たまたま』を題材にした本といえば、ナシーム・ニコラス・タレブの『まぐれ』が有名です。実は、この『まぐれ』という話題は、とても重要なことであり、なおかつとても深い意味を持っています。

実は、私たちは、自分が思っているほど『まぐれ』のことをよくわかっていません。さらに言えば、『まぐれ』について正しく認識することもできていません。

それでも、投資と『偶然』は、とても強い関係性があるので、けっして無視することが出来ない話でもあります。

株式市場などのマーケットを説明する言葉に、ランダムウォークという言葉があります。このランダムウォークの仮説によれば、株価の動きは、完全にランダムなので予測することは不能だと説明しています。

金融のマーケットは完全にランダム。ということは、まさに『偶然』そのものの世界を意味すると言えます。

それでも、金融市場には、本当に沢山の人達が、マーケットの次を予測しようと必死になっています。マーケットがランダムだという事を忘れているのか、それともランダムではないと考えているのか。はたまた、自分には神のような力があると思っているのか。

そしてその予測が、稀にその通りになった時。その予測が、『偶然』によるものなのか、それとも『偶然以外のなにか』なのかの境がわからなくなる。

中には、自分にはマーケットを予測する力はないのに、あると思って自信過剰となり、結局投資で失敗してしまうという事も多々あります。

私たちにとって、『たまたま』を理解することは、とても難しい事なのです。

偶然なのか、それとも偶然以外の何かなのか?

ものごとの結果に対して、それが『偶然』なのか、それとも『偶然以外のなにか』なのかを判断することは、私たちが思っているほど簡単なことではありません。この本では、その『偶然』と『偶然以外のなにか』を考えるための材料を与えてくれています。

テレビや雑誌、本などで、それはただの『偶然では?』と思うことを、まるで真実であるかのように説明しているのを見かけます。他にも経済や投資関連の本などには、まさにそんな類の話が多く見かけられます。これらでよくみられるのが、本書の中でいう所の「散弾銃効果」というものになります。この散弾銃効果は、『たまたま』を勘違いさせる典型的な事例です。

私たちにとって、『偶然』の話というのは、私たちが認識しているこの世界をつまらないものにしまうところがあります。たとえば、私たちは、奇跡や運命という話に惹かれることがあります。

映画や漫画、ドラマなど、エンターテインメントの多くには、この奇跡や運命というものを感じさせることによって、ストーリーを盛り上げていることが多々あります。そして、私たちはそこに感動を感じたりしています。

これが、人ということです。私たち人は、最初から『偶然』なんて求めていないということです。

奇跡や運命という話には、心を動かさせるけれど、『偶然』では何のときめきもない。だからこそ、『偶然』を正しく認識できない。

でも現実には、この世の中のほとんどは、『偶然』に支配されています。

話のほとんどを『偶然』で説明してしまうと、世の中をつまらなくしてしまうのかもしれません。でも、この世界が『偶然』でできている以上、この『偶然』というものの存在を無視することはできないのではないだろうか。

本書は、『偶然』という話のその不可思議さが、かえって面白いもののように感じる本でした。

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