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『一流投資家が人生で一番大切にしていること』 ウィリアム・グリーン (著)

お金や家計に関する本

一流の投資家は、哲学者?

『投資』と聞くと、「経済や金融理論、数式など、小難しい話で満載なんだろうな」と思う人も少なくないのかもしれません。

しかし、本書の目的は、投資を知ることではなく、投資家を知ることにあります。

投資や金融に関する専門知識なども少しは出てくるのかもしれませんが、本書の内容で最も重要なポイントは、「一流投資家と呼ばれる人たちが、どんな人たちなのか」という所にあります。

一流投資家と呼ばれる人たちが、何を考え、どのような日々を過ごしているのか。

そして、この本に出てくる投資家たちの話には、「『お金持ち』とは、なんなのか。」、さらに言えば、「『豊かさ』とは、どういうことなのか」を知る手がかりがあるように感じられます。

本書では登場していませんでしたが、著名投資家のジョージ・ソロスの場合は、本当は投資家ではなく哲学者になりたかったのだそうです。

この本を読んでいると、投資家という仕事は、哲学者になることなのかもしれない、と思えるほど、深い話だと感じる部分があります。

投資の仕事と哲学的思考は、もしかしたらつながっているのかもしれない。

はっきりいって、本書からは、具体的な投資のノウハウは、ほとんど学ぶことはできません。しかし、それ以上に大切な何かを学べたような気がしています。

「本書は投資の指南書ではなく、投資をひとつの切り口にした、より賢く、より豊かに、より幸せに生きるための本だ」(「訳者あとがき」より)

本書に登場する投資家たち。

この本の著者は、著者自身がもともと投資に興味を持っていて、投資でもっと儲けたいという気持ちから、ジャーナリストという立場を使って、著名投資家たちのところへインタビューに行くという話ではじまります。

ハワード・マークスやチャーリー・マンガー、ジョン・テンプルトン、ジョエル・グリーンブラット、といったたくさんの著名な投資家たちが登場してきます。

特に、モニッシュ・パブライとのエピソードは、著者の体験談としてもよく書かれているので、物語的な雰囲気で読むことが出来、読み物としての面白さも感じました。

モニッシュ・パブライは、世界一と言われる著名投資家のウォーレン・バフェットを、徹底的に真似ることで、大金持ちになった人です。

ただそこには、『真似する』という単純な意味ではなく、徹底的にクローニングするという、そこに一流と感じさせるものがありました。

人の真似ではなく、自分らしいもの、新しい何かを取り入れた方が素晴らしい。世間ではそう思われているのかもしれません。

しかし、パブライのクローニング技術は、まさに一級品で、そこを徹底的に突き詰めていけば、一流にもなれるということを証明してくれています。

考えてみれば、世の中すべてのことは、人の真似をすることで学んでいると言えなくもありません。

親の真似、先輩の真似、上司の真似、友達の真似、誰かのやっていることを真似して、新しいスキルや能力を身につけていく。

ただ、パブライの話の中で特に重要だと思うところは、『本当に優秀だと思えるものの真似をする』ということです。

「ほかの人にはわからない真実と出会ったら、けっして手放してはいけない」(「師匠と弟子と、六五万ドルのランチ」より)

ただ真似するというわけでなく、真似するべき人を選ぶ、真実を見る目も大切ということのようです。

豊かさとは何か

この本に出てくる投資家たちは、皆成功者で、大金持ちです。

おそらく自分たちが生きている間に、使い切ることができないほどのお金を持っています。

そんな人たちにとって、「豊かさ」や「幸せ」って何なのだろうか。おそらくこの本の中で、最も大切な目的の一つだと思われます。

バフェットは、死後自分の遺産のほとんどを、慈善事業に寄付すると公言しています。

生活スタイルも質素で、お金持ちという雰囲気すら感じさせないと言われています。おそらくバフェットにとっては、仕事や投資というのは、お金が欲しくてやるものではないのかもしれません。

本書の最後に登場する、チャーリー・マンガーの言葉として。

「人生で成功したことが、小さな紙切れを買って金持ちになることだけだったら、それは失敗した人生だ。金儲けがうまいかどうかよりたいせつなことがある。」(「富の向こう」より)

という言葉が紹介されていました。

チャーリー・マンガーは、バフェットの相棒として有名でしたが、あまり前にでるようなタイプではなかったように感じられます。

しかし本書で出てくるチャーリー・マンガーは、バフェットを上回るかもしれないほどの能力の持ち主だったのかもしれないと感じさせられました。

投資で成功した人たちに共通していることとして、「お金持ちであると思わせないような人」、「質素な生活」、「投資(仕事)が好きな人」という印象を持っています。当然、本書の中に登場する投資家たちからも、似たような印象を感じました。

中には極端な話かもしれませんが、収入の範囲で生活ができて、ちょっとお金が残るようなら、もう十分に豊かということだよ、という話もありました。

お金儲けは投資の本当の価値とは違うのかもしれない。

投資をするということの本当の目的には、この世界のゆるぎない真実を探すという目的があるのかもしれまん。

投資家とは、その本質が哲学者ということなのかもしれない。と感じさせる本でした。

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