成長株と割安株
筆者フィリップ・A・フィッシャーといえば、世界一の資産を持つ投資家、ウォーレン・バフェットの投資法に影響を与えた人として有名です。
バフェットは、フィッシャーの投資法の影響を受ける前は、ベンジャミン・グレアムのバリュー投資がメインでしたが、フィッシャーの影響を受けたことで成長株へ投資するようになったと言われています。
少なくとも今のバフェットの投資スタイルはグレアムよりもフィッシャーに近いような気がしています。
バフェットは、成長株もバリュー株も分けられるものでないと言っていました。一般的には成長株投資いわゆるグロース株と割安株投資のバリュー投資は、真逆の性質を持つものと言われていますが、バフェットから見れば、この二つは別物として見ていないというわけです。
成長株と割安株が別物と言われているのには、多くの場合で成長株が割安な価格になっていることがないからです。
将来的に大きな成長が見込める株は、当然その成長を見込んで株を買われます。すると、現在の価値よりも価値が上昇する将来の価値で取引されることになるため、現在の価値と比較すると株価が高くなってしまうためバリュー株とはなりません。
対してバリュー株は、誰もその株に大きな将来性を描いていないため、安値で放置されている株式ですから、将来の成長が期待されていないため、成長株とはならないわけです。
しかし、バフェットが言うには、この区別は本質的に間違っていて、株式投資というのは、将来的に高い成長が期待できる企業を、その成長を見越したうえで安く売りに出されたときに買うものだと言っているわけです。
成長株を割安で買う?
もともと割高になりやすい成長株を割安で買うためには、市場全体が不安感に包まれる暴落相場になった時、すべての銘柄がバーゲンセールとなっている中で、高成長が期待できる優良銘柄を購入するという方法がもっとも実行しやすいです。
バフェットの投資手法も、普段はキャッシュを温存しておいて、時期が来た時にドカッと動くということを何度も繰り返しているというイメージを持っています。
そして、その時に買うべき将来にわたって高成長が期待できる企業かどうかを教えてくれているのが、このフィッシャーの考え方というわけです。
フィッシャーはこの本『株式投資で普通でない利益を得る』で、将来にわたって高い成長をし続けてくれると考えられる企業を選択するための「15のポイント」を示しています。
正直その15のポイントは、具体的な数字などで示されているものではないので、私たち一般の個人投資家にとっては、どうやって実践したらいいのか難しいなと感じました。
しかし、だからといって成長する企業を見分けるポイントを数字などで明確に示してしまうというのも良くないのかもしれません。
あまりにも具体的に明示してしまうと、状況や環境が変わったときに使えなくなるという弊害もあるのかもしれません。永続する原理原則となるようなものは、多少曖昧な方のがいいのかもしれないです。
例えば、昔は製造業などが多く、設備投資に大きなお金がかかるというのが当たり前という時代だったけれど、今は製造業よりもITなどのサービス業の方が多くなり、設備投資にかかる費用がほとんどなくなり、企業を判断する上での財務内容の変化や利益率などに変化が起こっている気もします。
フィッシャーの投資法
フィッシャーの株式投資の考え方をざっくりと捉えるならば、いつまでも高い成長をし続けてくれると期待できる企業を徹底的に探し、その企業に投資をしたらとことん保有し、いつまでも株価が上昇し続けてくれる利益を取っていくという感じです。
まさに今のバフェットの投資の仕方に通ずるものがあります。
将来も成長し続けるとわかっているのであれば、現在の株価が高かろうが安かろうが関係ないというわけです。なぜなら、将来的には今よりも株価は上昇していることになるはずということです。
つまり、買値はそんなに気にする必要はないので、株を買う注文するときは、買値を気にしないで「成り行き注文」で買った方がいいと本書の中に書いてありました。指値注文して「買えない」ことの方がリスクだと言っていました。
話は変わりますが、本書の最後に『私が知るかぎりで最も有能な投資家の一人が、株式市場では知能が高いことよりも精神力が高いことのほうがはるかに重要だと教えてくれた』という言葉がありました。
実は、ウォーレン・バフェットも同じことを言っていました。
そしてこれは、私も痛感しているところです。どんなに賢くても、どんなに素晴らしい戦略や手法を知っていても、それらを実践する中で、かならず精神的な問題に突き当たることがあるものです。
その精神的な問題を解決できる人でなれば、おそらく株式市場などの金融市場で成功をつかむことはできないのだろうなと感じています。
実際、バフェットに影響を与えるほどの投資の考え方を持っていたフィッシャーでしたが、当の本人の晩年の運用成績は散々だったと言われています。
とはいえ、あのウォーレン・バフェットに影響を与えた投資哲学、学んでおいて損のない知識だと思います。そういう意味でもこの本はおすすめの一冊だと思っています。