お金の勉強と投資の勉強?

「株式投資とは、企業のオーナーになることです。」といわれることがある。

確かに株式を買って株主になると、企業の利益の分配を受けたり、役員人事などに票を投じる『議決権』を持つことが出来たりするので、あながち間違ってないかもしれない。

他にも、「株式を買うことは、企業の成長にお金を提供することになり、経済の発展に貢献することにつながる。」などと言われることもある。

これも、株式を買う人がいれば、株価を押し上げる効果はあると思われるので、株価が上昇し、企業の価値が大きくなり、融資や増資などで有利になることもあると思うので、株式を買うことで間接的に企業の成長に役立っているのかもしれない。

また、企業の成長に役立っているということは、経済の発展にも貢献することになるのでしょう。

ファイナンシャルリテラシーなどのお金の知識を勉強すると、このような話を聞くことが増えます。

お金の勉強の内容には、株式などの経済の仕組みや、国や企業の役割、税金や社会の在り方など、いろんなことがあります。

しかし、このような『お金の勉強』と『投資でお金を儲けるための勉強』は全くの別物なのではないかと私は考えています。

これらの『お金の勉強』の知識は、あくまでも投資の知識の裏付けであって、直接的な、お金を儲けるための投資の実践的な知識としては、全くと言っていいほど役に立たちません。

すなわち、投資で儲けるためには、ファイナンシャルリテラシーを磨くよりも、『投資でお金を儲けるための勉強』をしなくては、全く意味がないということになります。

経済や社会などのお金の知識を身につけ高いファイナンシャルリテラシーを持てば投資で儲けられるなんてことは全くない。

そのような考え方は、食材や栄養の知識だけで、料理を作ろうとしているようなものです。

もし投資が、高いファイナンシャルリテラシーを持っていれば儲けられるようなものであるのなら、なぜ世界中の経済学者たちが、世界有数のお金持ちになっていないのか、ということに疑問を持つべきだと思います。

株式市場への投資で儲けるためと、『企業の成長』に直接的な関係はない?

株式投資などの大きな市場がある金融資産への投資は、買う人と売る人の間で売買取引を行っているというのは、ご存じのことと思います。

つまり、株を買うには、その反対に売る人が必要であり。また逆に株を売るには、その反対に買う人がいなければ売買取引は成立しません。

はっきり言って、ここで行われる売買取引というのは、投資というよりも投機に近いと思っています。

つまり、株式市場というのは投資というよりも投機の市場だと思ったほうのが実態に近いのではないかと思っています。

株式というのは「値上がりすることを期待して買う。」ものであり、値上がりを期待するということは、「自分よりも高く買ってくれる人が現れる。」ことを期待していることになります。

先ほどのお金の勉強の話で出てきた、「株式を買うことで、企業の成長につながる」というのとは、全然違う理由で株式を売買しています。

実際に、株式を買ってもその時に支払ったお金は会社に行くのではなく、その株式を売った人のところに行くだけです。

支払うお金の行先は企業の成長とはほとんど無関係です。

株式売買というのは、「株を買うから、企業が成長する」のではなく、「企業が成長すると思うから、株を買う」のです。

つまり、理想的なお金の知識の世界と現実の株式市場の世界では、全く違う思惑で動いている世界なのではないかと思うのです。

だからこそ、「お金の勉強」をするだけでは、投資では全く役に立たない。投資をするなら、「投資の勉強」をしなければ、何の意味もないわけです。

「料理をするなら、食材や栄養のことよりも、料理の勉強をしよう。」と言いたいのです。

ですが現実的には、初心者向けの投資の本などでは、いまだに投資の勉強ではなく、お金や経済、株式などの話をしています。

挙句の果てには、「今後も世界経済が成長をつづけることは間違いないので、株式投資なら確実に資産を増やすことができる。」なんてことを言っていたりする。

本当に経済の成長と株式投資の儲けには、直接的な関係があるといえるのだろうか?

経済成長が続いても、株式投資で資産形成ができないという可能性はないと言えるのだろうか?

投資をするなら、もっと実践的な投資について勉強することも必要なのではないでしょうか。