確定申告を基に、国民健康保険の保険料は計算をしている?
毎年2月~3月にかけて行われる確定申告。その確定申告と言えば、所得税の計算をすることだと思うかもしれません。しかし、実際には確定申告書を提出することで、その確定申告書を基に、住民税や国民健康保険税などの計算にも使われていることはご存知ですか?
最近では、意外と所得税よりも、住民税や国民健康保険料の方に負担感を感じている人も少なくないようです。
つまり、税務署に提出する確定申告書の内容によっては、その負担感の大きい国民健康保険料にも影響してくるということです。
ただし、会社勤めなどで、社会保険に加入している人の場合には、ほぼ関係のない話です。自営の個人事業主やその配偶者、年金受給者などが、国民健康保険の加入者になっています。
確定申告書は税務署に提出しているものなのに、なぜ市町村に支払う市県民税や国民健康保険料にも影響があるのか。それは、税務署に提出された確定申告書が市町村にも提出されるからです。
市町村では、その提出された確定申告書から、住民税や国民健康保険料を計算して、課税しています。
国民健康保険料の計算は、まず確定申告書の『所得金額』から計算が始まります。
それ自体は、所得税や住民税と同じですが、国民健康保険料の計算が、所得税や住民税と大きく違っている点は、「生命保険料控除」や「社会保険料控除」、「住宅ローン減税」といった所得控除や税額控除がないところです。
所得税や住民税の計算をするときは、納税額を少しでも抑えようと、生命保険や地震保険の保険料控除を使ったり、確定拠出年金などに加入したりなどをしますが、それらの節税対策(所得控除)は、国民健康保険料には影響ありません。
他には、税額を減らすために、ふるさと納税をしたり、住宅ローンを組んで住宅借入金等特別控除を使ったりといった税額控除制度も関係ないので、これらの節税対策も意味ありません。
なんと、国民健康保険料は、ほとんどの節税対策が何の役にも立たないわけです。
また、国民健康保険の税率は、各市町村によって違います。また、計算方法も微妙に違っていることもあります。
これは、国民健康保険税を課税する主体が、市町村であるためですが、基本的には、所得の金額と世帯構成が計算式の主な要因となっています。
節税したつもりが逆に、国民健康保険料が高くしてしまうこともあるので注意が必要です。
節税するために、確定申告を行ったら、逆に国民健康保険料が高くなってしまったというケースがあります。
たとえば、「株式や投資信託の配当金を受け取ったので、配当控除を受けて節税しようと思い、確定申告をしたら、国民健康保険料が上がってしまった。」なんてことがあります。
同様に、特定口座での株式の売却益などのような申告不要が適用できるものを、確定申告で計上することによって国民健康保険料が上がることもあります。
申告不要制度というのは、株式や投資信託の配当金や売却益などについては、源泉分離課税を選択している場合には、配当金を受け取ったときに、配当金から直接所得税と住民税を控除されることで、課税関係を終了させることができるので、確定申告で改めて計算して申告しなくても良いという制度です。
しかし、所得税や住民税では、配当控除という制度があり、この制度を利用することで、配当金から自動で差し引かれた税金の一部を返してもらうことも出来るので、わざわざ手間をかけて確定申告をしようと考えたりします。
具体的には、配当所得を含めて所得金額が330万円以下の場合には、配当控除を使った方が有利と言われています。
しかし、この配当控除を受けるための確定申告をやってしまうと、配当金を所得金額に加えなくてはいけなくなります。
つまりは、所得金額が増えることで、社会保険に加入していない自営業者や年金受給者などの場合には、『国民健康保険料が増加する』ことになります。
場合によっては、国民健康保険料の増加分で、還付された税金や少なくなった住民税分が帳消しになることだってありえます。
このような、税金面での優遇を受けようとしたことで、かえって国民健康保険料が増加してしまうケースというのはいくつか考えられます。
国民健康保険料が増加する結果になったとしても、確定申告で税金を減らした方がいいのかどうかの判断は、実際に計算して確かめてみないとわかりません。
しかも、税制面と社会保険の両面を考えて、もっとも効率的な方法をアドバイスできる専門家というのもほとんどいません。
たとえば税理士に相談した場合だと、所得税から見たアドバイスに偏る傾向があり、住民税や社会保険までアドバイスを行っているのはとても稀です。
また、社会保険労務士だと、今度は所得税や住民税までわかっている人が少なくなります。
そしてファイナンシャル・プランナーのようなアドバイザーだと、税理士法などの規制があり、個別具体的な税務相談などが受けられないため、これもまた相談することが出来ません。
つまり、この手の問題は、自分自身で知識をつけて考えなければ、対応できない問題であることが多いという事になります。