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『ロジャー・マレーの証券分析 ──バフェットと並び称されるグレアム・ドッドの継承者』 ポール・ジョンソン、ポール・D・ソンキン (著)

投資と資産形成の本

グレアム・ドッドの承継者、ロジャー・マレー

ウォーレン・バフェットといえば株式投資で世界トップクラスの資産を築いた偉大な投資家としてとても有名ですが、本書の中に登場するキーパーソンであるベンジャミン・グレアムは、そのウォーレン・バフェットの師匠として有名です。

ベンジャミン・グレアムは、『バリュー投資の父』といわれ、当時はただのギャンブルの対象でしかなかった株式に、価値という視点をあたえることで、株式を投資の対象として考えることができるようにした人と言われています。

証券アナリストなどと呼ばれる人たちの仕事は、このベンジャミン・グレアムの教えがなかったら、今でも存在すらしていなかったのかもしれません。

そんなベンジャミン・グレアムの知識と考え方をしっかりと受け継いできた人の一人として、本書の主役であるロジャー・マレーが出てきます。

ウォーレン・バフェットが、グレアムの知恵を受け継いで投資家として大成功しているのに対し、ロジャー・マレーは、グレアムの行っていた大学の講義を受け継いだ人です。

マレーは、教育者として大学でグレアムの証券分析を教え、たくさんの学生たちを指導してきました。

しかも、マレーはただの教育者とは違いました。グレアムの投資理論を実践する投資家としての一面も持っていました。もちろん、十分すぎる実績も残しています。

マレーは、バリュー投資の知識だけでなく、実際に株式市場の中で経験をつみながら講義を行っていわけです。

そんなマレーという人物がどんな人だったのか、そしてどんな講義を行っていたのかを知ることが出来るのが、本書の内容になります。

実際に講義している時の話の内容も書かれています。

マレーの投資の考え方。

本書を読むとよくわかることですが、マレーの投資法は、完全なバリュー投資だったようです。

バリュー投資は、よく効率的市場仮説と反対の立ち位置だと言われています。「株価が本質的価値よりも安くなっている」ものを探すのがバリュー投資ですが、効率的市場仮説論者からすれば、『市場は効率的』なので、「本質的価値よりも安い価格で放置されているものは、株式市場には存在しない」と考えています。

つまり、効率的市場仮説論者から見れば、バリュー投資というスタイルは、「割安な株式を買っているのではなく、もともと価値のないものを割安だと思って買っている」だけで、いわゆる『安物買いの銭失い』だと考えているというわけです。

それに対し、マレーの考え方は、株式市場は非合理的な価格をつけていて、本質的価値と価格は別物だという考え方をとっていました。

本書の中に、『株式市場は往々にして不完全かつ非合理な分析に基づいて有価証券に価格付けをする』という言葉が何度も出てきたことからも、そのことがわかります。

つまり、マレーから見れば、効率的市場仮説の方が疑わしいという考え方だったようです。

マレーの「価格と価値は違う」という説か、それとも効率的市場仮説の「常に合理的な価格がついてる」という説か、そのどちらが正しいのかは、そう簡単に結論がでる話ではないかもしれません。

ですが、たくさんのバリュー投資家たちの運用実績から言えば、効率的市場仮説よりもマレーの考え方を採用したいと個人的には感じています。

ベンジャミン・グレアムがバリュー投資の基礎ともいえる『証券分析』の本を出版したのが、1934年。つまりは、『バリュー投資』という考え方が誕生してから半世紀以上にわたって、様々な投資家たちがバリュー投資を実践してきました。

ベンジャミン・グレアムやデビット・ドッドはもちろん、ロジャー・マレーやウォーレン・バフェット、本書に登場するマリオ・ガベリや本書の著者のポール・ジョンソン、本当にたくさんの人たちがグレアムの投資理論を基準にしながらそれぞれのスタイルのバリュー投資を実践し、実際に投資家として成功してきました。

この事実を、効率的市場仮説が言うところの「単なる偶然」だという言葉で結論付けてしまっていいのだろうか、いやそうではなく、『グレアムから始まったバリュー投資には何かがある』という可能性を考えてみてもいいのではないだろうか。

そんなグレアム流のバリュー投資を、まさにしっかりと受け継いできた、ロジャー・マレーの講義。

この本は、そのロジャー・マレーの講義を、実際に受けることができる本になっています。

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