ウォーレン・バフェットの哲学。
ウォーレン・バフェットといえば、偉大な投資家として有名です。株式投資によって、一代で資産10兆円を築いた、まさに投資の神様です。
そんなバフェットが、この世界をどう考えているのか。どんなことをして資産を築いてきたのか。株式投資で資産を築きたいと思っている人ならば、誰もが注目するところです。
ウォーレン・バフェットについて書かれた本には、投資方法に関する話が多くなっています。
バフェットの投資法として有名なのは、本質的価値よりも安い価格のものへ投資をする、バリュー投資というスタイルです。そして、一度買ったら長く保有するという話も有名です。「理想は永遠というぐらい」との長期投資思考だそうです。
しかし、バフェットの魅力は、その投資法だけでありません。
バフェットの考え方やビジネスに対する姿勢などには、多くの人が共感し尊敬されています。
バフェットの話で有名な言葉に『能力の輪』という言葉があります。
「能力の輪」とは、自分にできることと知っていることの範囲内で行動するという話ですが、この当たり前と思えるような話が意外と難しい。自分では知っていると思っていることが、「分かりやすく説明して」と言われるとうまく説明できなかったり、自分ならできると思っていることが、ただの自信過剰な事であったりすることもあります。
自分のことをよくわかっている。バフェットは、「能力の輪」の境界をはっきりと認識していて、決してその輪を超えることはしないと言われています。
「自分の能力を過信しない」。また、「よく知らないのに分かったふりをしないで、素直にわからないと認める」。本当にこれが出来ているのだとしたら、かなりの人格者です。
また、バフェットの『並外れたことをしなくても並外れた業績を達成することはできる。』という言葉もよく引用されているのを見かけます。
実際に、バフェット自身の並外れた投資の業績は、短い期間に達成されたものではなく、長い時間をかけて小さな目標を一つ一つコツコツと地道に達成してきたという「継続」の力にあると言われています。
これについては、『成功は、飛び越えられる30センチのハードルを探すことに精を傾けたからであり、2メートルのハードルをクリアできる能力があったわけではない』という言葉でも話しています。
他にも、『名声を打ち立てるには一生かかるが、台無しにするには五分とかからない』という言葉もよく使われています。
誠実であることを大切にする、まさにバフェットのビジネスに対する姿勢が感じられる言葉です。
本書では、そんなバフェットの哲学的な考え方を中心に描かれています。逆に言えば、バフェットの投資法を学ぶための本でないようで、この本を読んでも投資の参考にはあまりならないのかもしれません。
この本は、著者の描くバフェット像を書いている?
この本を読んで感じた感想としては、本書の中で描かれているバフェットのイメージは、あくまでもこの本の著者が描いているバフェット像なんだろうなと思いました。
というもの、私が個人的に描いているバフェット像とちょっと違う所があるように感じたからです。
でも、「誰がどんなイメージでバフェットを見ているのか」というのは、そもそも問題にする話ではないのかもしれないとも感じました。
みんなが描いているバフェット像あくまで、ひとつの偶像でありヒーロー像であることの方が多いのではないかと思ったのです。
なにかに憧れ、なにか目指すのであれば、「心の中にヒーローがいる」ということが一番大切な事なのかもしれません。
だから本物のバフェットがどんな人なのかという話は、私達が求めているほど価値のある話ではなく、実際のところどうでもいいことなのかもしれない。
そもそも、バフェット本人にあって、話して、直に感じてみるか、もしくはバフェット自身が自分の手で書いた本がない以上、私達は、バフェットという人物については、第三者のフィルターを通してしか知ることができません。
バフェットという人物の話を聞いて、自分自身がどんなヒーロー像を描くのか、本当に大切なことはそれだけなのかもしれない。そして、憧れのヒーローがいるというのは、自分を成長させるためのとても大きな原動力にもなりえるとも思っています。
子供の頃に、漫画やテレビの中のヒーローに憧れていた。そして、そのヒーローの影響を受けたことで今の自分がある。たまに、そう感じることがあります。おそらく、バフェットの凄さは、現実の世界の人なのに、多くの人々にそのヒーロー像を描かせる人物だということなのかもしれません。
実際にバフェットの細かな生活を見たら嫌に思う習慣や癖もあるかもしれない。けれど、成績だけでなく人間性も含め全体を通して、しかも何十年もの長期間に渡って、誰かにとっての「ヒーロー」になれる。このことが本当の「すごいこと」なのかもしれない。
この本を通して、バフェットという人物を通してみた、自分の描くヒーロー像というのを考えさせられた感じがします。