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『The Number Bias 数字を見たときにぜひ考えてほしいこと』 サンヌ・ブラウ(著)

経済や科学、その他の本

数字の魔力と恐ろしさ。

私達は、知らず識らずのうちに、数字というものを過信しすぎているようです。

何かを説明する時に、数字を入れると説得力が上がる。数字は理論的なもの、数字は嘘をつかない、数字には法則や真理的な意味もある。

なんとなく、数字に対してそんなイメージを持っている人も少なくないことと思います。

数という存在や数式には、たしかにそういうところがあるといえます。

数には神秘的なところを感じるところもあるし、自然界を数式にするとことで、この世界の真理のようなものが見えたりすることも多々あります。

数と数式があることで、この世界のいろんなことがわかるようになった。

数と数式、そして数学にはそんな魅力と説得力があるものです。

しかし、数の絶対的な存在感と、その数を扱う私達人間は、どうやら全くの別物のようです。

私達人間は、数を扱いながら、世界を湾曲して見ていることがあるようです。

私たちは、私たちが思っている以上に、数字に惑わされながら世界を見ている。

この本は、そんなお話です。

数字に惑わされず世界を見る。

数の話や数学的な話は、たしかに真理といえるものなのかもしれない。

しかし、私達の身の回りで多く見かける、平均値や中央値といった統計の数字。GDPやIQといった社会を説明するためにつかわれる数字やデータ。こういった類のものの多くは、数や数学のような真理的なものとは違っている。

私達が普段目にしているデータの多くには、疑いの部分が含まれている。

たとえば、平均値というのは、例外が含まれる場面では通用しない考え方なのに、そのまま平均的なものとして使われていることがある。

つまり、データのサンプリングの仕方自体を間違えているがために、その数字は真実を移したようなものでは全くないのに、それを真実だといって説明している。

また、わざと見せたい数値になるように、グラフの形を変えたりしていることもある。

他にも、サンプリングを変えたりして数字を見せていることもある。

どうやら、数字をつかって『ウソ』をつくことは難しいことではないようです。

本書の中では、GDPという数字を取り上げていました。

GDPというと、経済の成長力を表しているものと言われてはいるけれど、実はその数字だって政府の意図で中身を変えられてしまっている時があるのだそうです。

当初のGDPの意味としては、軍事費はGDPに含むべきものではないとされていたのに、経済が成長しているように見せるためか、途中から軍事費も計算にいれるようになったと本書の中にありました。

似たような話で言えば、日本でもアベノミクス以前のGDPでは、株式市場の上昇は反映させていなかったのに、アベノミクス以降は、株価上昇を経済政策の成果としてGDPの計算に反映させるようにしたという話もありました。

このように意図的に数字をつくっているために、『実感なき経済回復』などと言われてしまってるのかもしれません。

他にも、日本の食料自給率やがんになる食材といった研究、喫煙や健康の話など、様々なところで疑わしい数字が使われているようです。

さらに、最近良く見かけるようになったビッグデータも、疑わしいものだと本書では説明していました。

こういった数字には、商品を売りたい、こういう結果が出てほしいなどいった、データを扱う者の意図が、どうしても反映されてしまう。

その理由は、数字を扱う私達が、所詮は人だということです。この本でも人は合理的ではなく感情的な考え方をする生き物であることを言っていました。

そのため、それらの数字には数字を扱うものの思想や偏見がどうしても反映されてしまうので、意図してか無意識か、数字に歪みが現れてしまう。

本書は、そんな数字のウソに気づくための知恵を与えてくれる本です。

本書の中に、「数字は絶対的な真実ではない。ただ真実を理解する助けになってくれるだけだ。」という言葉がありました。

まさにこのとおりだと思いました。数字の裏にあるものを読み取り、正しく数字を認識できるようになりたいものです。

しかし、「そこにも人だからこその落とし穴がある」ともこの本の著者は言っていました。

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