バフェットを凌ぐ驚異のリターン。
投資の神様といえば、ウォーレン・バフェットが有名です。バフェットは、株式投資で世界トップクラスの資産家なり、2020年でその資産は9兆円を有に超えています。まさに株式投資界の偉人です。
しかし、そんなバフェットであっても、投資のリターンは年率20%ちょっとだと言われています。そんな中、本書で取り上げられているジェームズ・シモンズは、なんと年40%近いリターンを上げていると言われています。まさに驚異の成績です。
ジェームズ・シモンズは、年間約40%という驚異のリターンをどうやって成しているのか、そして具体的にどんな投資を行っているのでしょうか。それは、みんなが知りたいと思っているところです。ですが、ジェームズ・シモンズは秘密主義と言われ、その詳細は一切公開されることはありませんでした。
そしてついに、そのシモンズについての本が出ました。投資を学んでいる人なら絶対知りたいと思う話ではないでしょうか。
この本に期待することは、まさにそこではないでしょうか。
ジェームズ・シモンズ
ジェームズ・シモンズは、投資家だけでなく数学者としても有名で、シモンズの運営しているヘッジファンドの投資手法は、数学的なアプローチで運用されているのだろうということは前から考えられていました。
シモンズのヘッジファンドのメンバーは、金融業界の人や経済学者を入れることはせず、数学者や物理学者、暗号解読者などで構成されていると言われています。こういう点でも、シモンズの考え方は、業界では異端でした。
数学者が運営するヘッジファンドといえば、エドワード・ソープを思い出します。ソープはギャンブルの世界に数学を取り入れ、カジノなどを出し抜いて大金を稼ぎ、そしてその後金融の世界に挑戦した数学者でした。
彼のヘッジファンドも、シモンズと似たようなアプローチで、数学を元に金融市場に挑戦していました。
本書の中でも、度々ソープの名前が出てくることからも、やはりシモンズとは近いところに居たんだなと感じます。そしてエドワード・ソープもこの本と同じように本として出版されています。
これらの本を読むと、金融の世界と数学の関係性にとても強いものを感じます。実際に金融市場では、金融や経済の話よりも、数学の知識の方が役に立つことが多かったりします。
本書は、シモンズがどんなことを考え、その人生でどんなことをしてきたのかを知ることができる内容にはなっていますが、シモンズの投資手法の詳細については、本書を読むだけではさっぱりわかりません。シモンズの投資手法を期待して本書を手にとった人にとっては、ちょっと残念なのかもしれません。しかし、シモンズのヘッジファンドが、どのようなアプローチで投資をしてきたのかを知ることはできます。
本書の中で特に気になった一節は、「実際にモデリングしているのは人間の行動だ」という言葉です。この言葉に、シモンズの作ったヘッジファンドである『メダリオン』の投資の考え方の原理原則があると感じました。
投資方法の云々よりも、著名な数学者が見ているマーケットの本質を知ることができる面白い本でした。この本は、上下巻になっており、次はぜひ下巻も読んでみたいと思いました。