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『運動脳』 アンデシュ・ハンセン (著)

経済や科学、その他の本

健全なる精神は、健全なる肉体に宿る?

古代ローマの詩人・ユウェナリスの名言「健全なる精神は、健全なる肉体に宿る」は、どうやら本当だったらしい。脳は、運動することで健康になる。そして脳が健康であるということは、心が健康であることにもつながってくる。

運動には、ストレス解消、うつ・認知症の改善に効果があるだけでなく、脳機能の改善や脳の若返りなどにも効果があるのだそうです。うつや認知症の改善に、よく薬を使われることがありますが、科学的根拠からは、薬よりも運動の方が効果があることが分かっているとのことでした。

そして意外だったのが、スマホアプリなどでよく見かける、いわゆる脳トレが、まったくもって効果がないという事実。結局身体を動かさなければ、脳の機能は改善しないのだそうです。

身体と脳はつながっている。まさに一心同体のものであるので、健康な体にこそ、健康な脳、そして健康な精神が宿ることになるということのようです。

本書を読んで気づいたのが、脳の機能の衰えというのは、ある機能が欠落して起こっているというものではなく、脳内で起こっていることのバランスが崩れることで、脳の機能が衰えているように見えるということでした。

例えば、「うつ」といわれる症状には、海馬と偏桃体の機能のバランスの崩れが影響しているのだそうです。つまりはバランスが大切で、ただ海馬の機能が衰えているというだけではないのだそうです。もし海馬の機能が衰えていたとしても、偏桃体も同じように衰えてバランスがとれているようであれば、「うつ」のような症状はでないということなのかもしれません。

似たように、ストレスや認知症、モチベーション、集中力、記憶力、学習力、すべての脳の機能というのは、どの機能が欠落しているのかと考えるよりも、全体のバランスがとれていることが大切なのだそうです。

そして、そのバランスを整えてくれるのが、『運動』というわけです。

運動には、いろんな分野の脳内活動を、連携するように活性化する効果があるのだそうです。

考えてみれば、身体を動かす運動というのは、自分たちが思っている以上に複雑にできているものです。二足で歩くという行為一つとっても、ロボットで実現するのはとても大変だという話を聞いたことがあります。目というセンサーで周囲の把握、着地時などでバランスをとる、転びそうになるなど、もし身体が傾いたときには、その傾きを計算し、即座に体のどこかでバランスを調整する。

簡単なようだけど、センサーとしての脳の活動、そのセンサーに対して次にどうするかの命令、といったことをそれこそ瞬時に大量の情報を処理してくれています。

ましてや、ただ平坦な道を歩くだけでなく、でこぼこの道やぬれた滑りやすい道、時にはスピードを上げたり下げたり、さらに走ったり、スキップしたり、ボールを投げたり、当たり前のようだけど、一体これにどれだけ大量の情報処理が必要なのか、考えてみるととてつもないことのように思います。

だから、運動するだけで脳の機能はフル活用されるということなのかもしれません。

しかも机に座ってする勉強と違い、運動は脳のすべての領域を一体として使うことになるので、脳の機能を強化するだけでなく、バランスを整えるのにも効果的ということになるのだそうです。

「運動するだけで頭がよくなるなんてありえない。」と思うかもしれません。

私もそう感じるところはあるのですが、実験ではすでに「運動をよくする子供は学習能力も向上している」という結果もあるのだそうです。

運動するということの大切さを改めで考えさせられる本でした。

ちなみに、どんな運動が脳にとっていいのかというと、現段階の研究では、筋トレなどの筋力をつける運動ではなく、心拍数の上がる有酸素運動がいいそうです。

ランニングなら20分以上、可能なら45分以上行うと脳は最高のコンディションになるのだそうです。

そして、さらに強度を強めたインターバルトレーニングを続けると、脳は強く若返ることもあるのだそうです。

「よし!運動を始めよう」という気持ちになる本でした。

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