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『バフェット解剖 世界一の投資家は長期投資ではなかった』 前田 昌孝 (著)

経済や科学、その他の本

ウォーレン・バフェットは長期投資家ではなかった。

投資によって、世界トップクラスの資産を築いたウォーレン・バフェット。世界一の投資家や投資の神様などと呼ばれるぐらいの超大物投資家です。

そんなウォーレン・バフェットの投資スタイルといえば、『長期投資家』というイメージが強いです。「理想的な保有期間は永久だ」といった言葉も有名で、書籍など様々なところで、この言葉が引用されているのを見かけます。

しかし、実際にバフェットが行っている投資は、全然長期投資家ではなかった。

この本では、バフェットの経営している投資会社バークシャーハサウェイの過去の有価証券報告書などからデータを調査し、いろいろ数値を加工したりして調べながら、実際のバフェットが行っている投資の姿を解析しようとしています。

その結果、バフェットの本当の株式の保有期間は意外と短期だった、ということがわかりました。

コカ・コーラやアメリカン・エキスプレスのような、何十年も保有を続けている一部の銘柄のイメージが、バフェットを長期投資家だとイメージさせてしまっているのかもしれません。

実は、平凡な成績のバフェットの投資?

「投資の神様の運用成績が平凡なわけがない!」と思うかもしれませんが、本書で調べた内容だと、バフェットの成績は、『神様』というほどとんでもない成績だったわけでもないようです。

投資で世界トップクラスの資産を築くだけあって、確かに資産の増加はすごかった。しかし、投資したすべての銘柄でプラスの利益を出していたわけではありません。

株式投資ですから、すべての投資で利益を上げられるわけではないというのは、当然のことです。ですが、筆者が調べられる中で、バフェットの投資した銘柄のうち、S&P500(インデックス)以上のリターンを上げたものは、84勝97敗という成績だったそうです。

どうやらバフェットが投資した半分以上の銘柄がS&P500に負けている。このこと自体は、大して意味のある話ではないとは考えていますが、投資の神様と呼ばれているわりには、「あまりにも平凡じゃないか?」と思ってしまいます。

投資で成功したいと思い、バフェットの真似をしようとして、「次にバフェットが投資をする銘柄は?」と投資銘柄を探すことは、実際にはあまり意味がなかったようです。

バフェットの投資は、一般的なイメージと全然違う?

投資の神様とよばれ、ある意味「神格化」されているところさえ感じられるウォーレン・バフェット。

そのためか、バフェットの話になると、バフェットの投資の素晴らしさについてのストーリーが多く語られているように感じます。しかし、バフェットに限らず、「何もかもが素晴らしい、神様のような人というのは、この世界には存在しない。」という事を思い知らされます。

バフェットの本当の姿を知りたいのなら、バフェットの良いところだけでなく、悪いところも知らなければいけない。

この本は、投資の神様ウォーレン・バフェットに関する本の中では珍しく、バフェットの投資歴の中の影の部分に焦点を当てている稀な本なのかもしれません。

そして、そのバフェットの投資の影の部分に焦点を当てることで、バフェットの投資の本当にすごいところが見えてきたような気がしました。

まず、バフェットの投資銘柄選びの能力は、意外と平凡な成績だという事を知りました。

しかし、銘柄選びの能力が平凡あっても、あれだけの資産を築くことが出来たのはなぜなのか。おそらく株式投資において、銘柄選びというのはそれほど重要な項目ではないということなのだと思います。

多くの人が、株式投資というと、「何に投資をしたらいいのか」と考えがちですが、そこは資産を増やすにあたっては、あまり問題ではないようです。

また、資産を増やすためには「長期間保有をする長期投資をしなければいけない」というのも間違った認識なのかもしれません。

バフェットの平均保有期間は3.8年、確かに長い方ではあるかもしれませんが、バフェットの長期投資のイメージからすると、かなり短い結果となっています。20年以上保有しているコカ・コーラやアメリカン・エキスプレスのような銘柄もありますが、『1年以内で手放す銘柄が3分の1』だそうです。

バフェットの投資成績を上げていたのは、『長期投資』でも『銘柄選択』でもなかった。

『長期投資』と『銘柄選択』というのは、バフェットの投資法のキモと思われていたところです。しかし、実はそうではなかったという事実を知ることによって、かえってよく見えてきたバフェットの投資のポイントとなるものは、『集中投資』と『キャッシュポジションの変動』、そして『売買の頻度(たまに売買)』でした。

バフェットの投資を学ぶなら、『長期投資』や『銘柄選択』ではなく、そちらを学ぶべきなのかもしれません。

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