経済って難しい?
「経済の話は難しい」というイメージが強いためか、経済という言葉を聞いただけで、拒否反応を示すような人もたまにいるようです。
でもこの本を読むと、経済ってそんな難しい話ではなく、もっと身近で直感的に理解ができる話なんだなと思わされます。
そもそも経済って、ややこしい理論で組み立てられた数学のような世界ではなく、私たちの心の世界に近いのかもしれません。
つまり、経済事象と言われるものが、私たちの心によって引き起こされているものであれば、心を持った私たちが、経済の話を聞いて、「なにがなんだかわからない」というのは、おかしな話なのかもしれない。
経済学を難しい話にしてしまっている、一番の要因は、経済を数式でむりやり表現しようとするからだと言われています。
『経済学とは、占いのようなもの』だと本書の中でも出てきます。理屈や理論で説明できるような、もちろん数式のような、「こうなったから、次はこうなる」と結論付けられるようなものではありません。
なぜなら経済は、複雑系で成り立っていると言われています。
経済は複雑系
経済は複雑系のシステムでできていると考えられていますが、その複雑系がどういうものかというと、「なぜ起こるのか?」を説明しようとしても、その要因となっているのは一つの原因によるのではなくて、とてもたくさんのことが要因となって事象が発生していることを言います。
それこそいろんなものが複雑に絡み合って、ものごとが動いているシステムのことを複雑系と言っています。
複雑系で動いていると呼ばれているものには、経済の他にも、病気などの生物の体や、気象や天気、地震などがあります。
複雑系のものは、「こうだから、こう」とは説明がつかないものなので、その複雑なものをシンプルな数式にしようということ自体が、そもそもおかしいと本書では言っています。
たとえば、天気の話を例にとると、海面からの水蒸気が、上空で冷やされ雲になり、その雲が陸地に来て、雨として降ってくることになります。
このような天気のメカニズムは、すでに理解されています。学校の教科書などにも載っている、誰もが知っている話でもあります。
しかし雨が降るメカニズムがわかっていたとしても、「実際にどこの地点で、どのくらいの雨が降るのか」といった天気予報は、雨が降るメカニズムからは予測することが出来ないと言われています。
だとすると天気予報は何をもって予測しているのかと言うと、天気のメカニズムではなく、過去の天気データを利用した「統計的なアプローチ」により予報を出していると言われています。
天気予報が日々どんどん正確になってくるのは、時の経過とともに、気象データがどんどん蓄積されていくからです。
そして、経済も天気と一緒で、「こうだから、こうなるはず」といったことは、あまり当てはまらず、天気のように、風や気温、はたまた太陽と惑星そして地球の位置など、本当に多くの事象が絡み合い、複雑になっているため、単純な数式で説明できる話ではないというわけです。
経済も複雑系であるため天気と同様に予測はできない。でも天気予報のようにデータを積み重ねることで、今後どうなるかが何となくとわかってくる。というのが、この本の話です。
経済は面白い!
この本の良さは、「物語で経済の話をしてくれる」ところです。
物語で説明されると、人は理解が早くなると言われています。人はストーリーが好きなので、この本のような説明の仕方は、経済を理解するのに良いアプローチだなと思いました。
当然、難しくて訳の分からない、経済学の数式なんてものは登場しません。本書を読んで、「そもそも経済学とは、理屈的な数式ではなく、ストーリー的なものなのかもしれない」とさえ感じました。
本当ならばとても簡単なことを、やたら複雑にし、小難しく話している、今のそれが経済学なのかもしれません。
結局、経済は、人によって成り立ち、人によって動かされている。経済学の根本は、人の研究なのかもしれないとも思いました。
「経済ってなんなのか?」この本は、経済に触れる本として、おすすめの一冊だと思いました。