賢くお金を残す方法とは?
本書の目的は、会社と社長に1円でも多くのお金を残す方法です。
会社や社長に少しでもお金が残るためにする事といえば、『節税』が挙げられます。本書でもその『節税』についての話が多々紹介されています。
ただ、節税したからと言ってお金が残るとは限りません。実は「節税をしているのに、お金が手元に残っていない」ってことがよくあります。
そこが、この本のポイントです。
節税対策のほとんどが、お金を使ってやるものが多く、節税をすればするほどお金が手元から出て行ってしまい、納税額が減っても、それ以上にお金がなくなっていることが多いものです。
そのため、「お金が手元に残る節税」、「自由に使えるお金が用意できる節税」といったことを考えることが必要になります。
会社にとっての「自由に動けるお金」というのは、私たちの体で言う所の血液のようなものです。健康状態に関係なく、大量に出血してしまえば命にかかわってきます。
自由になるお金を手元に残しながら、バランスよく節税対策を考えていくことがとても大切です。
本書では、ただ税額を減らすだけの節税ノウハウではなく、1円でもお金が手元に残るための節税的なテクニックが披露させています。
税金よりも社会保険料対策の方が効果は大きい
本書の内容を通して思ったところは、節税対策よりも社会保険料対策の方が、手元にお金を残すという意味では、効果が大きいという所です。
下手に法人税や所得税を減らそうとするよりも、社会保険料を中心に節税対策を考えた方がトータルではよさそうだという事を、改めて実感します。
社会保険料は、じわりじわりと上昇していて、今やその負担感は会社と個人の双方にとって、とても無視できないほどの負担割合になってきています。
会社の規模によっては、法人税や所得税よりも社会保険料の負担感のほうが大きくなっています。
政府が法人税や所得税の減税政策などしても、たいしてメリットを感じていないことも多いものですが、実施されることはほぼないとは思われますが、もし社会保険料の軽減措置みたいなのもが行われれば、多くの人や会社にとって嬉しいニュースとなるのではないでしょうか。
本書を読んだ感じとして、社会保険の制度は、税金よりもまだ制度的に緩い部分があるように感じらえ、非常に大きな効果を生み出す負担軽減策がまだあるようです。しかも合法的に。
まさに、知っているか、知らないか、で大きな違いとなってくるのが、社会保険料なのかもしれません。
そんな社会保険料の負担額を減らす、テクニックが本書に書かれています。会社を経営する社長や、個人事業主にとっては、参考になる話もありそうです。
適切に税金を納めることも大切です。
本書では、様々なお金の残る節税対策や社会保険料対策が紹介されています。
しかし、その内容自体は、特に目新しいというほどのものでもなく、知っている人は知っているといった内容なのかもしれません。
税金や社会保険とった制度について、あまり詳しくない人に向けた内容なのかもしれません。
それと、本書の後半では税務調査について触れていました。節税対策の本として、税務調査の内容について触れるというのは珍しいようにも感じました。
税金のことをよくわからないまま会社を経営している社長の中には、節税と脱税の境目をよくわかっていない人を見かけます。
プライベートな支出なのに、「経費にすれば節税対策になるんじゃないか」と考えてしまっている人も多いと感じています。
しかし、もしそんな中で税務調査が入り、プライベートな支出が見つかれば、税務調査官は当然ながら法律通りに指摘してきます。誤れば見逃してくれると考えるのは、大間違いです。法律ですから、指摘されれば、その分の税金を追加で納めなくてはなりません。税務調査の間の立ち位置的にも、法律に従っていないという点で調査官に反論することもできません。
さらに言えば、本書でも書かれていますが、会社で社長のプライベートな支出を、損金(税務上の経費)として計算してしまっていると、それは役員賞与となり、源泉所得税が追加され、そして住民税がかかることになり、おまけに役員賞与は基本損金扱いにならないので、法人税も追加で請求されます。さらに場合によっては消費税まで追加で徴収される可能性もあります。
また、数年前のものである時には延滞税なども課される可能性もあり、悪質とみなされれば、重加算税といった罰金的な税金も徴収されることになります。
ちょっとの出来心が、倍返しどころか、3,4倍返しになるぐらいの可能性があります。
その辺についても触れていたところは、本書の良いところだと感じました。会社を守るという意味では、知っておくべきことだと思います。
何年も不適切な節税をやっている中で、税務調査に入られて、多額の納税を求められたとき、その税金を支払うお金がないという事はよく聞きます。
銀行などから借り入れができればまだいいですが、借り入れが出来ず資産を差し押さえられるという事もあるようです。また、ひどい時には売掛金が入金される通帳を差し押さえられるという話もあります。
まさに、不適切な節税というのは、ちょっとの出来心で会社を倒産させてしまうような行為だと言えます。
会社や社長に1円でもお金を残すという事の意味は、ただ1円でも税金や社会保険料を減らすという意味ではなく、適切に経営し、また納税していくことも大切のようです。