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『腸と脳――体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』 エムラン・メイヤー(著)

経済や科学、その他の本

腸と脳の深い関係

私たちの体にある、腸を含む消化器官は、第二の脳とも呼ばれています。なぜなら、消化器官には、脳のような神経回路があるのだそうです。

普段あまり意識したことはありませんでしたが、改めて考えてみると、食べ物を受け入れ、消化し、そして栄養として取り込むという作業には、膨大な情報が処理できるシステムが必要なはずです。

ごはんなのか、小麦なのか、はたまた肉なのか、魚なのか、それとも果物なのか、野菜なのか、私たちはいろんな食べ物を食べますが、その食物それぞれに適した消化の仕方は違うはずです。

その食物の区分けを、口に入った時に調べて(味覚)、その食物をどう処理するか(消化)を、胃や小腸など各器官に連絡する。さらに食べ物ごとに胃腸の動きなども計算して、便として排出する。

たまに、害のある物や処理ができない食物が入ってきた時には、それの存在も見落とすことなく、下痢や嘔吐といった形で排出する。

よくよく考えてみると、本当によくできたシステムです。

しかも、このシステムを動かす情報処理を行っているのは、脳ではなく腸自身がおこなっているというわけです。

腸が、第二の脳と言われるのもわかる話です。

そして、この第二の脳でもある腸が、脳と密に連絡を取り合っているというのが、本書の主な内容となってきます。

しかも、一般的には腸と脳なら、脳の方が上位にあるのではないかと思いがちですが、腸が脳の働きを決定づけているところもあるのだそうです。

つまりは、私たちの行動、性格、そういったものが、腸の性質で決まっていることもあるという話です。

その腸の性質を決める要素の一つに、腸内に住んでいる微生物群(マイクロバイオータ)があります。

私たちの胃腸で消化できない食物は、このマイクロバイオータによって分解され、栄養素として取り込まれるため、このマイクロバイオータの良し悪しが、私たちの体や健康を左右することがあります。

しかし、このマイクロバイオータの良し悪しは、健康だけの話ではないかもしれません。

腸が私たちの性格などにまで影響を与えているというのであれば、このマイクロバイオータの良し悪しが、私たちの健康だけでなく、性格などにも影響を与えているのかもしれないという話になってきます。

そして、実際にそのマイクロバイオータが私たちの性格などにも影響を与えているということが、実験などで少しずつ実証され始めたということでした。

マイクロバイオータが食べ物を分解するときに発生する、私たちの体の中のホルモンのようなものが、脳まで届いて、イライラや幸福感といった様々な感情を感じさせるのだそうです。

腸に正しい食物を届けることが、身体だけでなく心の健康にもつながる?

腸の活動が、私たちの脳の活動、そして感情や性格といった心の問題にまで絡んでくるとなると。食べるという行為が、身体の健康のため以上の、もっと大切なことになってきます。

もしかすると、正しい食べ物を取っているかどうかが、私たちが人生を幸せと感じるのか、それとも不幸と感じるかにも影響してくるのかもしれません。

腸に正しい食べ物を届けるとは、どういうことなのか。その答えの一つが、腸の中のマイクロバイオータを健全な状態に保つためにどうすればいいのかということなのではないでしょうか?

本書の中では、ハンバーガーやホットドック、甘いジュースといった高脂肪系のアメリカ式の食べ物には問題が多いと言っています。

確かにこれらの食物は、おいしいものですが、人の体にはこの動物性の脂質というのは、あまり合わないものなのだそうです。今の近代的な生活を送れるようになる前まで、私たち人は狩猟採集をして生活していたと言われています。その時代に食べていたであろう動物性脂質も、今のような脂っぽいものではなくもっと淡白なものだったと考えられるそうです。

では逆に、マイクロバイオータにとっていい食物は何かといえば、誰もがピンと来るかとは思いますが、ヨーグルトなどの発酵食品が挙げられるそうです。

マイクロバイオータを作る微生物群に、直接良質な微生物である乳酸菌などを送るわけですから、当然といえば当然です。

そのほか、マイクロバイオータを健全に保つために効果があると考えられていることには、食べ過ぎないということもあるそうです。もっと言えば、断食なども効果があると書いてあります。

そして意外だったのが、起こっている時や悲しい時など、ストレスを感じている時は食べない方がいいということも書いていました。怒りや悲しみなどのストレスは、消化器官にも影響を及ぼすそうで、マイクロバイオータにとっても良くないようです。

食べ物が、身体の健康だけでなく、心の健康にまで直接つながっているという話は、とても考えさせられます。

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